ミリオンダラー・ベイビー

教授から,最近大学内の盗難事件が多く,土曜日はセキュリティが厳しくなっているのでビル内に入れないかもとの連絡あり.ホテルのチェックアウトと午後の約束まで時間があるので,前から興味を持っていたこの映画に.本当は,仕事の関係で「交渉人 真下正義」を一度見ておかなければならない(謎…笑)のだが,これはまたの機会に.

クリント・イーストウッドヒラリー・スワンクモーガン・フリーマンという素晴らしい俳優達の前半・後半の対照的状況における演技は本当に素晴らしかった.ヒラリー・スワンクは,演技に加えて肉体の変化を通じて,リアルにボクシングとは何か,人生とは何かを訴えかけてくる.強固な意志が顔にはっきりでているタイプで,Queenフレディ・マーキュリーとそっくりだと感じた…と書くとファンに怒られるだろうか?一応,かわいく見える時には瀬戸朝香に似ていると付け加えておこう.

モーガン・フリーマンの演技が素晴らしいのは,彼女と同様に多くの助演男優賞を獲得していることで証明されているが,ここでは俳優としては賞に恵まれていないクリント・イーストウッドの演技を押しておきたい.人生を不器用に生きてきた,自分の思いを素直に出せない無骨な男の得たささやかな幸せ,彼の愛情は彼女の状況が変わっても変わらないが,それ故の苦悩を見事に演じきっていたと思う.心を素直に表せないゆえにまったく想像がつかないけど,実はとてつもなく繊細で優しい人間を心の動きに重点を置いて演技したゆえに,評価が低いのかもしれない.

エンディング間際に,彼女のリング名「モ・クシュラ」(←見に行く人は調べないようにっ!)の意味を告げるシーンが圧巻.終了した時に,泣いている人は少なかったようだが,これはより強い思いが観客の心の中を占めていたからからだろう.私は単に泣かせるだけの映画は,実は底が浅いことが結構多い気がしている.

これはボクシング映画である以上に,人生に苦悩する人間の映画だ.