嫌われ松子の一生(吉祥寺プラザ)

以前から非常に期待していた「下妻物語」の中島哲也監督の映画.

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この映画の撮影では,主演の中谷美紀と監督がものすごく衝突したらしく,あまりにショックを受けた中谷美紀は撮影後にインドに行ってしまったくらいで,一体どのような作品に仕上がったのかと,多少不安があった.

見終わった感想としては,「とにかく凄い」の一言である.最後まで,息をつかせないくらいの勢いで,一気に見てしまった.

CMディレクタ出身の中島監督は,ストーリーを大胆に変えて,CGや音楽を駆使する.それは一見すごく見えるにもかかわらず,結局単なる小手先のテクニックで単なるストーリーのつなぎにしているのは,中谷美紀の圧倒的な存在感だ.最初は一見ミュージカル風(だが,これは主人公が歌うわけではないのでミュージカルと言えないが)でコミカルに見えるが,そのシーンの合間に出てくる松子の存在感は強力である.さりげない一言がものすごい重みを持つ女優は少なく,中谷美紀を登用したのは,まさに正解だったと言えよう.

これは非常に不幸な女性の物語であるが,ハッピーエンドだと感じさせる.それは松子の強い前向きな想いがあるからである.また.見る者みな,ものすごい不幸なストーリーの根底に自分の人生の一場面を見つけて,重ね合わせることであろう.

この映画は,ある種の理想を象徴する子供時代の松子(奥ノ矢佳奈)と,リアルを感じさせる大人の松子との対比を選んだ点で成功したと言えるのではないか.内容がちょっとアレなので,万人に勧められるわけではないが,見て損はしないと想う.

なお,DVD化が楽しみである.ある雑誌で,中谷美紀が歌を吹き替えられてしまった,そんなに下手だったのかしら…と落ち込んだコメントをしているのを見たので,ぜひ中谷美紀バージョンの歌も聴けるようにして欲しい.それこそが,本当のミュージカルであろう.歌は技術よりも,ハートなのだから.