技術講演会(G社)

G社の技術講演会に聴講に行く…が,実はそこはG社が注目している国内の技術者や大学生を集めての,就職・転職説明会であった(笑)…と言うと言い過ぎだが,要するに日本のトップクラスの人達との交流を密にすると共に,自社の様子をエンジニアの口から直接知って貰いたいという施策の一環のようだ.もちろん,帰りにはおみやげと一緒に求人情報が…(笑)なお,書いてまずい話は一切書いていないはずだが,書かれていたらメールして欲しい.

日本企業の新卒採用の場合には,基本的には人事部門が前に出て,技術者はあまり喋らせて貰えないし,内情を正直に喋ってしまうような人は隔離される(苦笑).しかし,G社がこのような施策を取るのは,一つは彼らが欲しいのは上澄みの人達で,ごまかしは効かないと認識していることと,自社が技術者を大切にしていることに絶大な自信を持っているからであろう.このような試みは,米国や中国と比べると,どうしても転職が一般的とは言えず,技術者間の人間ネットワークも貧弱な日本では特に必要だと思う.ただ,申し込みが多すぎて,直前に大きな部屋に変更せざるをえなかったというのだから,どれだけ注目されているのかは推して知るべし.

なお,いわゆるIT系のイベントに集まる人達とは,かなりカラーが違うように感じた.これは,そういうイベントでは海外の技術を日本に紹介するエバンジェリスト的な人が多く,彼らが中心になっていることが多いが,この集まりでは自ら何かを生み出したような実績のある人達が招かれているからではないかと思っている.

講演内容は,開発体制,G社のメールサービス,そして?igtableの話.基本的には知っている話も多いのだが,特にBig?ableのノウハウ的な話は興味深かったと思う.

なお講演前と懇親会で,私はG社の人達にも,呼ばれた人達にも知り合いが結構多かったので,いろいろ情報交換ができた.

その中で感じたのは,国内のこの分野のメーカーは今後人材の確保に困るのではないかということ.以前にT大の学生はG社に行きたがって先生が困っているという話を聞いたので,W大の助手に聞いたところ,そうではないが異業種を選ぶ傾向が強くなっているとのこと.さらに,O社のM田氏から,K大の情報系に合格するレベルが下がっていて先生が困っていると聞く.つまり,今後は優秀な人はなかなか入らなくなるし,せっかく入った優秀な学生もG社などに取られてしまい,日本の大会社には来なくなるかもしれない.本当に真面目に対策を考えないと,致命的な問題になってしまわないだろうか?しかし,個人的にはG社にがんばって優秀な学生を根こそぎ引っこ抜いて頂くことで(笑),少なくとも学生のレベルの低下だけは食い止めて欲しいと思っている.高校生の段階から,この分野における「将来の夢」を与えることは絶対必要だろう.

ところで,このM田氏に声を掛けられた時には,本当にびっくりした…というのは,彼は関西在住だからで,まさかこのような怪しい集まり(笑)に(出張で)来れるとは思わなかったからである.しかし,実はO社が今のままではいけないと,地位が高い人まで連れてG社に学びにきたというから,さらに驚きである.たとえば,G社がいくら食事が只とか,20%ルールと言っても私はまったく驚かない…というのは,我が社が昔はほとんど同じことをやってきて,しかもそれは会社の存続に影響するような重要な局面も支えたこともある(と私は思っている).しかし,我が社は,ここ10年ほどでそれらを全て捨てて,今の日本式の成果主義に移行してしまった.たぶん,他の日本のメーカーも同じ状況にあるのではないだろうか.ここで内省して新しく生まれ変わるか,それとも現状の路線を続けるかで,各会社の将来の方向性は大きく変わるに違いない.

なお,G社の論文や発表を見ていて思うのは,今後各企業はソフト志向…特にサービス志向になっていくと思うが,それにおいて基本ソフトウェアの内製やOSS開発における主導権を取ることは必須だろうか?それとも,そこまでは影響しないのか?ということである.G社の独自の技術から積み重ねたソフトウェア群は,他社に対する競争力を確保する重要な武器になっており,I社もサービス志向でありながら,低レベルのソフトウェアもしっかりコントロールしている.しかし,日本の大メーカーは,どちらかと言えば,この分野を切り捨てようとしているように感じるが,それで大丈夫なのだろうか?それとも,将来において大きな問題になるのだろうか?

…なんてことをつらつら思いながら,いろいろな人と話をする.H田氏がやはり学位に食指を延ばしているらしいとか,K藤氏に子供が誕生したとか,I原氏が結婚(笑←謎)時に無茶苦茶写真を撮ったとか,T林氏のBinary Hacksが売れたためにT葉氏までがJava Binary Hacksを書いているという噂とか,T木氏が髭を生やして誰かわからなかったとか,O俣氏までG社に転職しちゃったとか.

なお,H田氏が非常に仕事が多そうだし,某氏のブログでもそのような話を読んだので,今回「どのくらい働いてます?」と聞いて回ったところ,実は予想ほどではなかった.まあ,人によるのだと思う.