「日本酒は出荷後の時間の経過によって劣化する」は誤り

ビジネスジャンプの「ソムリエール」の監修の堀賢一が同雑誌の「ワインの自由」で書いた言葉…しかし,ワインの専門家ともあろうものが,こんな間違いを書くとは…これで日本酒に誤った認識を持つ人が増えてしまうと思うと,非常に残念.編集部に訂正を要求すべきだろうか?

まず,日本酒は沢山あり,出荷前に夏を熟成したものを秋上がりを呼ぶし,良心的な蔵では数年寝かされることも多い.「日本酒の購入に際して,製造年月日を確認する消費者はほとんどいない」とあるが,まともな酒飲みなら,いつ醸造されて,いつ出荷されたかを確認するのは常識である.実際に,まともな酒屋では,醸造年度を明示して売られ,また古い方がおいしいと勧めてくれる.問題は,蔵元で長期熟成させた場合には,価格が跳ね上がることぐらいであろう.そこで,自宅で冷蔵または常温保存することも多い.そもそも,日本酒に賞味期限がないのは,熟成が普通だからなのだ.

保管方法が悪いとか,フレッシュな状態で飲ませるのが目的で熟成に耐える造りではない場合にはその限りではないが,これはワインとまったく同じであろう.日本酒の方がワインより変化が早いというのはあるけど.

なお,なぜ堀賢一がそのような誤った認識をしてしまったかというと,酒類ディスカウンターで1万5千円も払った日本酒が瓶詰めから四年経っていて,中身が茶色がかった濃い黄色でひねた匂いがしたかららしい.まあ,とんでもない店にひっかかったから誤解してしまったとしたら同情の余地がある.ただし,そもそも日本酒で1万5千円と言ったら,(プレミアがついていなければ)ちょっと高すぎる…こんな値段を付けるのは古酒も多いので,誤って古酒を買ってしまって口に合わなかったという可能性もあるかもしれないなあ.

なお,昔は古酒は単なる不良在庫にすぎなかった.それが市場に出てくるようになったのは,さくらの親父さんが日本酒の蔵に要求したから…というのを本人に聞いたことがある.