非電子的世界の流儀を電子的世界に無理にいれたことでマーケットをつぶしたいい例になってしまいました。(S藤I朗教授の日記)

尊敬するS藤I朗教授の2008年7月2日の日記の電子書籍ビジネスに関するコメント.私は電子書籍ビジネスには将来性があると思っている.というのは,リアルの本は場所を取って困るし,検索できないし,良い本でもすぐ廃刊され入手できなくなるからである.もちろん,リアルの本の利便性は否定しないのだが,そうでなくてもよいものは電子的に処理できた方がよいと思っている.いや,将来性があるというより,将来的にその方向でしか生き残れなくなるのかもしれない.ただ,日本では潰されてしまった.
しかし,海外に目を向けると,すでにO'Reillyは自社の書籍を電子化して,その特徴を生かした流通を始めているし,Amazon.comを含めた電子書籍リーダーは好調である.さらに,なによりもこの瞬間にG社が図書館の書籍などをどんどんデジタル化しているのを忘れてはいけない.まだまだインフラは貧弱だが,それが整った時に爆発的に流行するのではないかと思う.その時,日本は海外の流儀をそのまま受け入れるだけしかできないだろう.
なお,同じことは他の分野でも起こっている.音楽・映像の世界で,著作権と言えば何でも通ると思って,権利管理団体が暗躍しているのは誰でも知っていることだろう.iPhoneがどれくらい売れるかわからないが,もし普及したら音楽の扱いが一気に緩和され,音楽配信が今以上に普及するだろうし,結局主要な部分を海外企業に握られてしまうことになるかもしれない.広く言えば,「既存世界の流儀を強引にそのまま新しい世界に入れようとすることで,結局その世界を潰す」ということで,これがいたるところで起こるのが,日本が世界の主導権を取れない理由なのかもしれない.