赤んぼ少女(渋谷シアターN)

今年は梅図かずおの作品の「赤んぼ少女」と「おろち」が二本も映画化された.主人公の南条葉子役の水沢奈子は古風な顔だなあと思っていたが,後からプログラムをよく見ると原作にそっくり.どうも,今回の俳優はどれも原作のイメージを生かした感じで選ばれたらしく,タマミを除けば美女・美男ばかり.ちなみに,水沢奈子はTV版「スミレ16歳!!」の四谷スミレ役(原作を知らないとわからないが,なんと等身大の腹話術の人形役なのだ!)を演じていたらしい(…見たかった…).そういう変わった役も演じて来たからか,この映画でもなかなか良い演技を見せてくれる.この映画で一番注目すべきは,母親の南条夕子役の浅野温子.狂気と母親の愛情を見事に悲しく表現している.他に,お手伝いの紀伊スエ役を演じた生田悦子もかなり印象的.登場人物は少ないけど,どの俳優も結構良いと思う.映像も,なかなか見せてくれた.予告編を見た限りでは結構キワモノかなと思っていたけど,実際に見てみると悪くはない.
ただ,肝心のタマミのマペットの動きがいま一つ.原作がそういうトリッキーな表現だったかもしれないけど,実際に見るとどうしても安っぽく見えてしまった.また,タマミが持つ悲しみというものも充分表現できていなかった気がする…この作品のテーマはホラー映画としては素晴らしいので,それがうまく表現できれば名作になったかもしれない.