iPhoneの文字入力

表に書こうかとも思ったが,裏が取れた話ではないのでこちらの方に.次の記事によると,2.1からはMeCabベースの仮名漢字変換に切り替えたらしい.つまり,これがG社のK藤氏信者の義兄が夏に一生懸命やっていた仕事の成果で,iPhone独自の仮名漢字変換を自分が担当していたMac OS Xの「ことえり」ベースの仮名漢字変換に置き換えたのでないかと思う.
iPhoneの仮名漢字変換はMeCabを利用(yebo blog)
ただし,同時にパソコンとの同期により得られる大量のデータを活用した入力支援(例えば,住所録の氏名の漢字と読みを使った変換やSafariのブックマークに含まれるURLの補完)が無効にされてしまったようだ(同時に単語登録の道も一時的に閉ざされたが,一番大変な首のすげ替えは済んだので,そのうち「ことえり」のユーザ辞書との同期や辞書登録アプリが実現する可能性はあると思う).スマートフォンはさまざまなデータをパソコンと共有するので,できる限りそれらのデータを活用するという以前のアプローチは興味深かったし,辞書を作るタイミングとコストの問題はあるとしても,少なくともユーザによる単語登録を許すとしたら実行時の検索コストはあまり変わらないので,もしかすると復活する可能性もないわけではないかも.これは単なる推測だが,もしかするとこういう面白いチャレンジをしていたということは,独自版はあの「富豪プログラミング」のM井氏が関与したが,システムの成熟度と計算リソースの問題で時期尚早だったので,義兄に急遽応援要請されたのではないか?(ただし,この裏を取ると彼らに迷惑が掛かりそうなので,何も聞かないことにする(爆))少なくとも,これでJail Breakした時の辞書の作り直しの道は簡単になったと思う(たぶん,K藤氏がブログに書いていたようにすれば,MeCabのツールで独自に辞書が作り直せそう).
激重になる現象はかなり改善されたけど,まだ残っているようだ.これは仮名漢字変換の問題ではなく,リソースが足りなくなった時の管理の問題のような気がする.たとえば,Mac OS X 10.5から導入されたGCの実行のような何らかのバックグラウンド処理が原因だったりするのかなあ?
なお,今iPhoneに関して日本のメディアやキャリアは一生懸命ネガティブキャンペーンを張っている.しかし,iPhoneは普通の携帯電話というよりスマートフォンなので,(ソフトバンクモバイルがどう思っているかはわからないが)台数的には大成功(そもそも自分のパソコンを持っていないと役に立たないのだ!)だし,一般の携帯電話と比較しても見劣りない台数である.iPhoneは,スマートフォンを日本に根付かせた点,アップデートにより携帯電話が進化できることを肌で感じさせた点,今まで日本の携帯キャリアが鎖国のために渋ってきたパソコンやネットワーク上のサービスとのデータ同期・共有という概念を日本のユーザにも「普通」の感覚にしたこと,そして鎖国的な携帯サービスにWeb 2.0的サービスの風を吹き込んだ点は功績ではないかと思う.今日本の会社が続々とiPhone向けサービスに参入している(Windows MobileNokiaでは,このようなことはなかった!)ので,実世界のおける使い勝手はどんどん変わって行くと思う.mixiのコミュで見ていると,P905iの時にはほとんど買うまでの話やハードの出来不出来の話だったのに対して,iPhoneはアプリの活用法の話でいまだに盛り上がっており,ユーザの使い方が違うのを感じる.
このようなネガティブキャンペーンの一貫として,KDDIの社長の次のような発言がある.
iPhone不振は「想定内」とKDDI小野寺社長 「スマートフォンよりケータイの方が使いやすい」ITmedia

小野寺社長は、iPhoneを含むスマートフォンの魅力は現状、テンキー式の携帯電話より劣っているとみる。「スマートフォンの総販売数を見ても、端末の魅力は低いと言える。まだ携帯の方が使いやすいというのが本当のところだろう。入力方式にしても、日本の携帯ユーザーにとってはテンキー入力が当たり前。テンキーを前提にした日本語変換が便利になっており、今のスマートフォンより圧倒的に打ちやすい」

スマートフォンのキーボードの問題は,ソフトウェアキーボードの打ちやすさの問題と,QWERTYキーボードvs.テンキーの問題に分けられる.前者は,フォースフィードバックがないソフトウェアキーボードの方が確実に劣る(だから,フォースフィードバックが得られるソフトウェアキーボードを実現したら大金持ちになれるはず!).しかし,後者に関しては,QWERTYキーボードに慣れているパソコンユーザなら,Nokia E61のようなハードウェアQWERTYキーボード+(日本の携帯で培われた)予測変換の組み合わせの方が圧倒的に入力効率が良く,一度体験したら決して元に戻れないと思う.もちろん,このようなキーボードは幅が広いのが欠点だが,後継のNokiaE71では使い勝手を落とさず幅を狭くできたようで,片手での入力も可能になったようだ.E71は日本人にもかなり売れているので,そのうち国内でも正式な(強力な予測変換機能を持つ)日本語版が何らかの形で発売されると思うので,楽しみだ.
最後に,同じような機能を持つ日本の携帯とスマートフォンを隔てているものは,データ共有・同期という点でないかと思う.日本の携帯は個々の機能はスマートフォンより高性能なことが多いが,完全に世界が閉じている.たとえば,Bluetoothは使えなかったり,使えたとしても機能が制限されていることが多いし,キャリアが公式に認めているデータ共有・同期は電話帳ぐらいでないかと思う.これを確実にするために,今まではソフトウェアの拡張性を捨ててハードウェア=物として扱ってきたわけである.しかし,Googleのようにクラウドコンピューティングでネットワーク上にデータを置くアプローチや,Apple ComputerのMobile MeやNokiaのOviのようなデータ同期サービスが,パワーユーザやビジネスマンだけでなく一般のユーザにも普及していくとしたら,そのようなアプローチを拒否してきた日本の携帯キャリアや携帯メーカーはどうなるのだろうか?もしかすると,携帯のOSはSymbian OSAndroid(or 組み込みLinux)に収斂していき,結局海外メーカーに携帯電話向けサービスの根幹を握られてしまうのかもしれない.