くいもんや 華音(はなおと)(静岡市葵区)

燗酒おやぢ氏のMLで紹介されていた「一酒庵の呑ませ手たち」というお酒を出荷している飲食店のマイマップを見ていて,静岡市にも「華音」という店を発見した.そこで新宿駅行きの高速バスに乗る前にGoogleマップを見ながら歩いて探して,ビルの外に看板を見つけたのでさっそく入ってみた.

店内には8人掛けくらいのカウンターと,テーブル席(4人掛け,6人掛け)が二つあるだけのこじんまりした店である.カウンターの上方にはお酒の紹介とともに,「酒の実力は燗にあり」という頼もしい言葉が書かれた貼り紙がある.また,尾瀬先生の書いた夏子と自画像の色紙も飾られている.
料理は,お通しの大根と挽肉の煮物,おまかせ三点盛(鮪,鰹,〆鯖),とちお揚げのねぎみそチーズ焼き,麻婆豆腐.カウンターに座った時に本日のメニューをざっと見て,刺身の三点盛と栃尾の油揚げを注文したのだが,前者は1cmくらいに厚く切られた刺身で特に〆鯖の〆具合がよく,後者は油揚げを二つに切って中に挟んだもので,外側のぱりっとした焼け具合と中の味付けがよく非常に美味しい.
お酒は以下の通り.定番の品揃えは白隠正宗,杉錦,神亀,どぶ,独楽蔵というところのようだが,メニューや店内の貼り紙にはないものの,他にも辨天娘,鯉川るみ子の酒などの一酒庵らしいお酒の瓶が並んでいるのも発見した.燗酒おやぢ氏には悪いが,まず静岡に来たら静岡の酒だろうと,最初は定番中の静岡の酒二種類を注文,その後食事に合わせて選んでもらった.白隠正宗の山廃は数十年ぶりに復活させたものらしいが,この燗が静岡らしからぬ味で非常に旨い.篠田酒店にもあまり種類を置いていないようなので,今度一度酒蔵に問い合わせてみようかと思う.天保十三年は食米なので独特の癖があるのだが,それを感じさせない絶妙な温度で燗してくれていたので,この酒はこういう風にすればよいのかっ!と開眼した.

  • 白隠正宗 山廃純米(静岡・高嶋酒造株式会社)燗
  • 杉錦 山廃純米酒 天保十三年 掛米:静岡県産あいちのかおり(78%)・麹米:ひとめぼれ(70%) 静岡HD-1(静岡・杉井酒造有限会社)燗
  • 神亀 手造り純米酒 辛口 山田錦・五百万石・美山錦(精米歩合60%) (埼玉・神亀酒造株式会社)燗

さて,一旦頼んだ後につらつらメニューを見ていたら,この店の料理のルーツは実は中華料理…それも四川料理ではないかなあ…と思わせた(一般的な中華メニュー以外にも,鱈の白子の麻婆ソースなどの料理があるのだ).そこで次は中華らしいメニューにしようと思っていたら,隣に常連らしき二人組がきて麻婆豆腐を注文したので,それがここの名物なのかと私も麻婆豆腐を注文.さらに「これにどのようなお酒を合わせたらよいですか?」と聞いて神亀を推薦してもらった.「辛さを弱くしますか?」とも聞かれたが,もちろん「そのままで!」.
さて,一体どうなることか?!と楽しみに麻婆豆腐を見ると,油の色は真っ赤,口に含むと山椒の強烈な味が襲ってくる.そこで神亀を口に含むと,意外なことに普通に美味しい.これは麻婆豆腐の辛さを洗い流してくれていることと,しっかりした味があるからだろう.ただし,水を飲むと,これがレモンを口に含んだのかっ!というような酸味のような強い刺激が口の中で爆発してしまう.味わう味蕾が違っているのかもしれないが,かなり面白い酒と料理のマリアージュ体験だった.「作」のmixiのコミュで麻婆豆腐をリクエストしていた人がいたのは,これが理由だったのか!と納得.いや,いい店を紹介してもらいましたっ!
さて,この店はいかにも地元の人を対象としたこじんまりとした店のようで,月曜日定休で日曜日も開いているし,夜遅くまでやっている穴場である.一般的な居酒屋メニューも美味しいのだが,できれば複数人で行く方がボリュームがある中華系メニューが頼めてよいだろう.なお,JR静岡駅からも,静鉄新静岡駅からも近いが,繁華街からちょっと外れた場所にあるので,地図を印刷しておくなどの事前の場所の確認は怠りなく.