釣りキチ三平(T・ジョイ大泉)

少年マガジンの発刊50周年を記念した名作「釣りキチ三平」の映画化.三平三平役の須賀健太は,原作のイメージを壊さない三平役を演じてくれている.三平一平役の渡瀬恒彦は,原作の設定より若い点が少々気になっていたのだが,悪くはなかったと思う.ゆりっぺ役の土屋太鳳と三平愛子の少女時代役の渡辺栄香らの正当派美少女っぷりも際立っていた.
さて,正直に言えば,この映画はリアリティがなく突っ込みどころ満載で,釣りについてろくに知りもしないスタッフで作られたのが明らかである.

  • 映画中の巨大岩魚は巨大岩魚とは言えない.渓流に住む岩魚は陸封型の生活をしているために小型なのだが,降海型のアメマスになると非常に巨大化し,それとともに外見が大きく変化するのである.この撮影の巨大岩魚は20〜30cmぐらいの小型岩魚をそのまま拡大したものであり,巨大化した岩魚ではないことが一目瞭然.
  • 釣りシーンが非常におかしい.たとえば,フライラインで水面を叩く,キャスト時にティペットがまっすぐ伸びていないで丸まっている,フライの周辺のラインがくるくる丸まっている,フライリールで魚とファイトしている(フライリールは単にラインを巻いておくためのもので,ファイトするためのものではない(大型用はドラグが備わっているものもあるが))など,これではとてもネイティブの魚は釣れない.
  • 釣りに関する発言がおかしい.たとえば鮎川魚紳が日本の渓流魚は小さいと言うシーンがあるが,たとえばヤマメ,アマゴ,岩魚の降海型のサクラマスサツキマス,アメマスは(湖でも)巨大化するし,鮭類も遡上し,イトウなどの巨大魚もいることを考えると,こういう発言は考えがたい(釣りを職業としている人は,こういう釣り人の憧れの巨大魚を狙わされるのが普通なのである).塩焼きを食べるシーンでは,それまで尺超えを連発しながら,なぜ20cmぐらいの養殖岩魚なのか?

なお,鮎釣りのシーンはそれほど悪くはないように見えるので,渓流釣り・フライフィッシングのシーンを専門家にちゃんと見てもらわなかっただけだろうが(このような多数の初歩的ミスに気が付かないことはありえない!),あまりに安易だったと思う.やはり漫画で読むのが一番.