食堂かたつむり(T・ジョイ大泉)

ご飯をつくるのが大好きな女の子の物語.
監督は富永まい諸星大二郎の漫画「栞と紙魚子」シリーズをドラマ化した「栞と紙魚子の怪奇事件簿」に監督・演出としてかかわったと言えば,その独自さが想像つくかもしれないが,この作品は,映像,美術,音楽,イラストのすべてが個性的で,独自の幻想的な世界を作っている.ただし,それがうすっぺらなものにならないのは,「生きることは食べることである」という信念が貫かれているからであろう(この意味は原作や映画で感じて頂きたい).
主演の倫子役は柴咲コウ.野山を駆け回り食材を集めるという設定からか,かなりスッピンに近い(=きれいじゃない)化粧である.なお,彼女は料理好きで,この映画の料理を自分で作ったらしい.
共演も良い役者ばかりだが,特筆すべきは倫子の母親ルリコ役の余貴美子.かなり強烈な個性と主張を持つあまり,自分の娘への愛情を素直に表せない母親を見事に演じていた.最近の出演作品の中でも特にはまり役だったと思う.
なお,映画中のイラストが素晴らしかったし,料理のレシピが載っているかと思って久しぶりにパンフレットを購入した(溜まる一方なので最近は買わないことにしていたのだ)が,残念ながらあまり力は入っていなかった.しかし,料理に関しては「食堂かたつむりの料理」という本が出ているらしい.

食堂かたつむりの料理

食堂かたつむりの料理

この辺では,三鷹の「yomo」が,こんな感じの食材の特性を生かしたシンプルな料理を作っていると思う.
「魚が捌けない」,「生肉が気持ち悪い!」,「動物を殺すのが残酷だから菜食主義なの」,「鯨がどんなに増えて他の魚資源を圧迫したとしても,絶対穫るべきでない!」というタイプの人は,絶対見てはいけない素敵な映画だ.
(追記:ちなみに会社から戻って22時からのレイトショーで見たが,なんとお客は私一人だけ!いい映画だと思うが,アピールしないか…?)