にほん酒や(吉祥寺)

その後,吉祥寺に戻り「にほん酒や」に.この日は控えめにするつもりが,わざわざ来てしまったのは,メニューにあった「シロナガスクジラ」という言葉のため.
私の亡父はシロナガスクジラが世界的に禁漁になった後に,なんと貴重な尾の身(最高級部位)を入手して,ルンルン気分で帰宅して母に渡し,風呂に入った後でそれをつまみながら酒を呑もうとしたが,いつまでたっても出てこない.不思議に思った亡父が母に聞いたところ,「子供たちにカツにして食べさせました.美味しい,美味しいと言って,またたくまに食べてましたよ.」と返答されて,二の句が継げなかったそうだ.ここで怒らないところが,亡父の良いところだが,それでも相当悔しかったらしく,何度も何度も聞かされて来て,その雪辱戦をしてあげようと思ったのだ.
料理は,お通しのキノコと酒粕のにゅうめんとシロナガスクジ鯨のお刺身.鯨は一般的な赤肉(あかにく)の部分で,さくさくした食感でありながら,噛み締めると赤身の旨味がしっかりあり,とても美味しい.昔と違って冷蔵技術が進歩したので,最近の鯨肉の質はどこも非常に良く,今回も臭みなどはないのでニンニクなどはつけないで,醤油を少しつけるだけで食べた方がよかった.あまりに感動してゆっくり食べていたら,高谷氏に「お口に合いませんか?」と言われてしまった(笑)
赤肉でこれだけ美味しいのだから,尾の身は一体どんな味なのだろうか?


ただし,シロナガスクジラは現存する最大の動物種であるが,実はすでに述べたように個体数が世界で数千頭しかいないために1966年の国際捕鯨会議で保護動物として指定され,現在では世界的に捕獲が禁止されている.現在はアイスランドナガスクジラが捕獲されているので,ナガスクジラの方なのかもしれない.また,日本で販売されている鯨肉で過去一回シロナガスクジラの遺伝子が見つかったことがあるそうだが,それはシロナガスクジラナガスクジラの交雑個体で外観では見分けがつきにくいために,アイスランドナガスクジラとして捕獲・流通されていたそうで,今回もそのような混雑個体なのかもしれない.今回食した鯨肉がどちらなのか,今度高谷氏に聞いてみようと思う.
それにしても,調べれば調べるほど,亡父が食べ逃した(が,私が鯨カツとして食べた(爆))シロナガスクジラの尾の身は貴重だったんだなあ…と痛感する.
この日のお酒は以下の通り.鯨肉に合わせてとお願いして,鯉川と梅乃宿を持って来て頂いたが,今回は脂が少ない赤肉なので,濁り酒はあまり合わないようだ.その後大倉も持って来てもらったが,火入れの軽く熟成した純米酒が相性が良さそうだ.