某キックオフシンポジウム(T大)

某研究会のキックオフシンポジウムのためにT大に.
今回の招待講演は4件.
最初はあのイグノーベル賞を二回獲ったK成教授の粘菌の話.彼の話は以前にも聞いたことがあるのだが,やはり粘菌をテーマに選んだのが最大のポイントなのかもしれない.
S成准教授はAI(Agri-Informatics)農業の話.なお,AI農業と勝手に略したのは官僚で,抵抗したけど聞き入れてもらえなかったらしい.現代の農業政策のひずみと情報処理の関連についての興味深い話で,政府が主導する大規模農業や農業工場はコストが嵩み生産性も低く質も悪いのでペイしないが,そもそも日本の農業は小規模でも採算が取れるので,高収益をあげる熟練農家のノウハウを定量化し,知識を再利用することに焦点を置いているそうで,いかに政府が嘘を宣伝しているのかよくわかる(実際にいろいろ口止めされるらしい).農家や販売店と結びついて,継続的な非接触検査ができるセンサーの開発から含めて研究しているそうで,「データマイニングする研究者は出口をしっかり考えないといけない」という言葉が身にしみた.
M原教授は,例のコンピュータ将棋の話.将棋の探索が二段深くなるとレベルが一段上がるそうで,現状のままでも計算機が早くなればプロ棋士に勝つ可能性があるそうだ(ちなみに,全体対戦の時には事前試験がほとんどできなかったこともあり,クラウド部分はあまり活用されていなかったらしい).ただ,チェッカーのようにコンピュータとプロが対戦できた時にはプロがまったく歯が立たなかったということがないように,互角な時に対戦しておきたいらしい.なお,Bonanzaによる先細り前向き枝刈りが一世を風靡してしまったが,大局的な戦略はまだ人間が考えているし,必勝法が存在するゲームでありながらまだ見つかっていないし,もしプロ棋士に勝てた後は人間を楽しませるアルゴリズムの開発がさかんになると予想しているらしい.
G木田氏は観光統計の話で,今まで単位がまちまちだったが,今後は統一されるとのこと.また,一部ではあるが情報が公開されるかもしれないというのは嬉しい.なお,20年前に比べると,旅行に行く人と行かない人に二極化しているので,これからは口コミで広めてもらうことと,リピーター化が過大らしく,統計分析もその方向でおこなうらしい.
今回は非常に面白い講演だったが,今後も興味深い発表が集まってくれることを期待したい.