マグマ(真山仁・角川文庫)

本書は,一言で言えば「歴史から抹殺されようとしていた地熱発電が,反原発の意見の高まりと高温岩体発電という新技術の登場で復活する」という物語である.フィクションらしいご都合主義的なところもあるが,技術に裏付けられて,よく練られたストーリーは,かなり読み応えがある.

マグマ (角川文庫)

マグマ (角川文庫)

驚くべきことは,2008年3月に発行されたというのに,そこで書かれている記述は現在の日本にまさに当てはまることである.もし店頭にあれば,最初の5ページを読んでもらえば,東京電力(作品中では東都電力)の現状との酷似ぶりに必ず笑い出すことを約束しよう.
また,最近,風力や太陽光などの日本では安定供給できない実効性が疑問な発電方法ばかり誇大に宣伝されるのに,逆に有望そうな地熱発電は政府の施策からも外れようとしているのはなぜ?と疑問に思っていた人にも答えを与えてくれるだろう.
これから化石燃料やウランなどの枯渇性エネルギーに過度に依存しすぎないで,どんどん再生可能エネルギーの比率を高めるべきだと思っている人には,ぜひ一読をお薦めしたい.