大鹿村騒動記(T・ジョイ大泉)

長野県の村歌舞伎を題材に,そこで生きる人たちと男女の愛情の機微を描いた人間味溢れる映画である.映画館で上映される予告編がかなり変で,出演者が曲者ばかりなので,非常に気になっていた.
主演は原田芳雄で,残念ながらこれが最後の主演映画となってしまった.いや,「自らの原点を確認するためにどうしてもやっておきたい」と企画から携わり,上行結腸がんを患った病気の体をおして撮影し,病状が悪化して声がでなくなって車いすの状態でも試写会にも出席したところを見ると,彼は自分の納得できる最後の主演作品を自ら作り上げたと言えるかもしれない.
競演も,大楠道代岸部一徳佐藤浩市石橋蓮司,でんでん,小野武彦三國連太郎と素晴らしいベテラン俳優陣で,若手も松たか子瑛太冨浦智嗣などとなかなか素晴らしい.特に,かなりはじけた佐藤浩市と,独特のキャラでこの種の役には他の追随を許さない冨浦智嗣は見ものである.
ラストで流れるのは,忌野清志郎の「太陽の当たる場所」.これもこの話に合ったじんとくる良い歌なので,ぜひ聞いて欲しい.

歌舞伎を知らなくても,瑛太が的確な解説を入れてくれる(笑)が,知っているともっと楽しめるだろう.なお今回は特別料金で1,000円均一だそうだ.興味ある人は見るべし.