奥野田ヴィンヤード倶楽部(奥野田葡萄酒醸造株式会社・甲州市塩山牛奥)

1月に剪定した結果母子を支線に括りつける誘引作業のために,再び奥野田ワイナリーに集合.
最初は,奥野田ワイナリーの土壌に対する考え方と誘引作業の講習だった.

まず,土壌に対する考え方で覚えていることをメモしておこう(ただし,聞き覚えで間違っているかもしれないので,鵜呑みにしないで欲しい).

  • 基本的には化学肥料を使わない.今までは化学肥料では硝酸態窒素を過剰に与える傾向があり,化学肥料の場合は吸収されやすいこともあって徒長や葉の過剰成長を招き,葉が枯れる原因になったり,枯れた葉に虫が集まったりして逆効果だった.肥料を何年も使わないで生育すると,豆科の植物が繁茂して,その根粒菌が土壌に窒素を固定し,適度に放出してくれるようになった.ただし,常に土壌のミネラル分を測定し,万が一足りなくなった場合にはその成分だけを化学肥料で補う準備はしている(が,今まではその必要はなかった).
  • 硝酸態窒素の量は,葉の色でわかる.緑が濃い場合は多すぎる.逆に,最近のアク(=硝酸態窒素)抜き不要なほうれん草の葉の色は淡い.
  • 有機肥料は使わない.これは過剰栄養分が土壌に残留し,虫の発生の原因になるからである.
  • 殺虫剤は使わないで,ボルドーミクスチャーなどの最低限の殺菌剤を使用する.殺虫剤は被爆の原因になりやすいし,そもそも虫が発生しにくい農業を心がけている.
  • 不耕起栽培をしている.逆に畑を耕す方が,雨が降ったりした時に土壌が固まりやすい.また,せっかく沈んだ重金属類などが再び表面に出て来てしまう.

次は誘引作業の講習についてのメモ.

  • 支線と同じ高さで結果母子の芽が水平方向になるように枝を曲げて,支線に巻き付けてから,枝の先端をタイラップで固定する.
  • 力が入りすぎて折らないように,曲げたい箇所に中指を添え,人差し指に力を入れて片手で曲げる.
  • 分岐の部分など芽の間が短い場合には折れやすいので注意する.初心者は無理せず,他の場所を曲げてもよい.
  • 支線よりも高い場合には,仕方がないので下方向に曲げて先端を固定する.
  • 巻き付ける場合に芽の部分が支線に接触しないように,曲げ方向と巻き付ける方向を考える.巻き付け回数の目安は半回転から一回転程度.
  • 枝が濡れている場合は水分を充分に吸い上げているので折れにくい.枝が乾いている場合には折れやすいので注意する.
  • 万が一折ってしまった場合でも,ビニールテープを巻けば再びくっついて成長することもある.
  • 枝がまっすぐだと,栄養分は先端だけに集まってしまう.だから,芽の部分で曲がってジグザグしているような枝の方が均等に栄養分が分配されてよく,誘引作業の曲げでもその効果も得られる.場合によっては,さらに他の箇所も曲げるようだ.
  • 栽培性を向上するために,常にキャノピーコントロールを考える.
  • NHKの「名曲アルバム」でヨーロッパの各ワイナリーの映像が流れているので,見ていると非常に参考になるそうである.

実際の誘引作業は以下のようにおこなっていた.

これが私の葡萄の樹の誘引作業前の状態(前回よりも芽が大きくなっていた),

これが誘引作業後の状態だ.なお表皮を剥がしてあるのは,虫がつきにくいようにするため.1月も頑張ったのだが,3月の方が圧倒的に剥がしやすかった.

さらに講習の合間に,現在以下の樽でおこなっているマロラクティック醗酵とシュール・リー製法の説明もして頂いた.

  • マロラクティック醗酵(Malo-Lactic Fermentation, MLF)は,酵母によるアルコール醗酵終了後に,乳酸菌でリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解すること.リンゴ酸が多すぎると酸味がきつい.乳酸菌は純粋培養したものを添加する.
  • シュールリー製法(フランス語で「澱の上」という意味)は,アルコール発酵終了後にすぐ澱引きせずに,しばらく一緒にしておくこと.一日一回撹拌する.澱(酵母)が自然分解したアミノ酸やペプチドがワインに深みや風味を与える.
  • アルコール発酵時には,最初は天然酵母で醗酵させるが,アルコール度が高くなる(10%以下?)と醗酵が止まるので,さらに耐アルコール性が高い酵母を添加してアルコール度数が12%程度になるまで再醗酵させる.最近は数種類複合させて用いることが多い.
  • 日本酒と異なる点は,酒母の段階で乳酸菌を取り込むor乳酸を添加する日本酒に対し,アルコール発酵後に乳酸菌を添加すること,複数種類の酵母を果汁の状況によって積極的に使い分けること,蔵付き酵母・乳酸菌は使わないことなど.

作業終了後は,みんなで食事.我々は誘引作業の後で食事をしたのだが,逆の組は再び振り出した雨で大変だったようだ.(追記:奥野田ワインブログにこの日のランチの詳細が書かれている.)

  • 奥野田ワイナリー特製弁当.いつものように酒の肴っぽい(笑)が,野菜が多めなのは奥野田ビアンコに合わせるためだそうだ.


呑んだワインは以下の三種類.奥野田ビアンコと奥野田ロッソはできればあと二週間は寝かせたいところだそうだ.

  • 奥野田ビアンコ 2011 甲州市収穫甲州種50%・シャルドネ50% アルコール度12%(山梨・奥野田葡萄酒醸造株式会社)
  • 奥野田ロッソ 2011 奥野田地区収穫メルロ85%・カベルネフラン15% アルコール度12%(山梨・奥野田葡萄酒醸造株式会社)
  • ローズ・ロゼ 2011 奥野田地区収穫ミルズ アルコール度10.5%(山梨・奥野田葡萄酒醸造株式会社)


なお,奥野田ヴィンヤード倶楽部に入ると,次のような素敵な剪定鋏ケース(モデル:ayaya)を格安で作ってもらえる.私もこのワイナリーに毎年通える場所に再就職が決まれば,ぜひ作ってもらいたい….