アーティスト(吉祥寺バウスシアター)

学生時代に昔の映画をいろいろ見まくっていた私が以前から気になっていた「アーティスト」を見に行く.これは,サイトレント映画からトーキー映画に移行する時代(1927〜1932年)のハリウッドを舞台に,サイレント時代に名声を博したスター俳優と,彼に見いだされてトーキー時代に上り詰めて行く若手女優の物語だ.アメリカ映画かと思いきや実はフランス映画であり,ヨーロッパから見たハリウッドの世界と言えるかもしれない.
一旦カラーで撮影されてからモノクロ化されたそうだが,昨今の技術の進歩のおかげか,その白と黒の世界は私の記憶にある昔の映画より鮮やかできれいだ.なお,サイレント映画と言っても,それは技術的制約からではなく,単なる表現手段なので,主人公が迫りつつあるトーキー時代に抱く不安が,音を使って見事に表現されている.アカデミー賞サイレント映画が受賞したのは83年ぶりだそうだが,「表現とは何なのか?」ということを考えさせてくれる.
主役のジョージ・ヴァレンティン役のジャン・デュジャルダンは,昔のハリウッドのスターのオーラとニヒルさを見事に表現している.ペピー・ミラー役のベレニス・ベジョは昔のハリウッド女優とはタイプがかなり違うが,なかなか個性的な演技を見せてくれる.二人の演技が抜群だと思っていたら,二人ともコメディアンだそうだ.
なお,この映画で彼らと匹敵する見事な演技を見せてくれた名犬ジャック役のアギーも忘れてはいけない.彼もカンヌ映画祭のパルムドッグ賞と金の首輪賞を受賞したそうである.
この映画は必見だ!バウスシアターにおける上演もあと少しだが,近くの人は時間を割いてぜひ見るべし!!