奥さまは魔女(Bewiched)(吉祥寺バウスシアター)

洗濯機を回している間に,映画館に(10分で映画館に行けるのは最高!).

子供のころにアメリカのホームドラマを毎週食い入るように見ていた人は多いだろう.その代表的な作品が「不思議な魔女ジニー」と「奥さまは魔女」だ.つまり,この映画は,その偉大なホームドラマのリメイクなのだ.

ただ,その偉大さゆえに,同じように作るわけにはいかないというプレッシャーがあったのだろうか.この映画はニコールキッドマンのラブコメディとして仕上げられている.まあ,原作をリスペクトしたまったく別の作品と考えた方がよい.

それを受け入れるならば,そのリメイクぶりはかなり見事だ.これは「奥さまは魔女」のリメイクの中で「奥さまは魔女」をリメイクするという再帰的な話(まさにリフレクションだっ!)であり,現実の世界,TV中の「奥さまは魔女」の世界,その撮影している世界,そしてオリジナルの世界が何層にも重なっているのだ.観客は,その世界の間をまさに「魔法のほうきに乗ったかのように」連れ回される.

配役に目を向けると,ニコール・キッドマンはまさにはまり役だ.まず,顔が似ているだけでなく,例の鼻ぴくぴくも見事で愛らしい.それで,とにかくキュートなのだ.

共演者のウィル・フェレル(=ダーリン)は,落ち目のわがままな俳優の役をうまくこなしている.シャーリー・マクレーンマイケル・ケインも,そのキャリアを反映して素晴らしいと思う.

なお,劇中では,L-O-V-Eのような古いジャズ曲が多用されている.また,ニコール・キッドマンが着ているニットが素晴らしくエレガントなのだが,これは「オードリー・シェイプ」らしい…つまり,オードリー・ヘップバーンが着ていたデザインなのだ.つまり,この映画は現代映画でありながら,クラシカルでエレガントな雰囲気を濃厚に漂わせている.エンディングはあっさりしているが,古い映画や音楽が好きな人は,この雰囲気を味わうだけでも価値があるかもしれない.