ハチミツとクローバー(渋谷シネマライズ)

映画館の予告編で見た,はぐ(蒼井優)の初登場のシーンが印象的だったので見に行ってみた(まだ原作は読んでいない).なお,インターネット上で予告編の動画が見つからないのは,主演がジャニーズ所属だからか?

http://www.hachikuro.jp/

肝心の蒼井優の演技は人付き合いが下手なはぐの設定に合わせて抑え目だったが,その中で見せる表情の変化…特に最後の笑顔が素晴らしかった.特に良かったのは,森田忍役の伊勢谷友介,山田あゆみ役の関めぐみ,花本修司役の堺雅人である.伊勢谷友介は非常に生き生きしていると思ったら,そもそも東京藝術大学出身らしく,まさにはまり役と言える.関めぐみは,心が揺れ動く少女の役を好演しており,またそのナチュラルさが素晴らしい.堺雅人ははぐを見守る先生役なのだが,その独特のやさしい雰囲気がよかった.中村獅童も短い出演ながら,非常に印象的だった.

さて,竹本祐太役の櫻井翔だが….私はジャニーズのタレントと俳優が大きく違うのは,自己表現方法だと思っている.俳優はどんな役でもどんな心理描写でもできなければいけないし,実際にうまくこなす.しかし,ジャニーズのタレントは,自分をいかに強くファンに印象づけるかが重要であり,それゆえに非常に個性が強い.つまり,自分のキャラに合った役柄では,普通の俳優もかなわない輝きを見せるが,合わない場合には役柄に合わせることができない.また,複雑な心理描写も苦手だと言える.…で,今回は残念ながら役柄とミスマッチで,それが他の俳優の好演で目立ってしまったと思う.ジャニーズのタレントを使うと動員は増えるかもしれないが,今回この竹本祐太役さえ良ければ格段に良い映画になったはずなので,もうちょっと使う方も考えた方がいいと思う.彼には,「木更津キャッツアイワールドシリーズ」の好演を期待したい.

他によかったのは,その映像の質感と美術である.美大の物語ということでものすごいカラフルなはずなのだが,それを非常に優しく撮影している.また,美術作品はかなりリアルだと思ったら,さまざまな芸術大学の学生や若手アーチストに制作を依頼しているらしい.この点では非常に見応えがある仕上がりになっていると思う.

この手の青春映画が好きな人は見に行っても損はしないだろう.