さくらん(吉祥寺バウスシアター)

休日に仕事以外に何もしないのもつまらないので,映画を一本見て出勤.連載をちゃんと見てはいたのだが,事前の情報ではあまり期待してはいなかったが,予想ほどはひどくはなかった.

蜷川実花は写真家だけに,静的な映像は美しく,美術も独自性を打ち出して,美しい世界を作り出している.椎名林檎の音楽も,これまた予想に反してなかなかバラエティに富んでいて結構良い.

役者はというと,椎名桔平石橋蓮司夏木マリ市川左團次というベテラン達が非常にしっかり脇を固めていて,木村佳乃菅野美穂も彼女達なりの花魁を演じている.当然他にも女性が沢山でてくるのだが,その中では美波の存在が埋もれずに一際目立って見えたので,今後の注目株かもしれない.

肝心の土屋アンナだが,残念ながら演技が今ひとつのように感じた.まず,元気でパワフルだが,全体を通した時のメリハリがなく,ストーリーに応じた心理変化が感じられにくい.評価を受けたデビュー作「下妻物語」のアホでバカだけど純粋なヤンキー役と違って,このような人間の成長を描く話だと,ストーリーがぶつ切りになり,一貫性も深みも感じられなくなってしまう.インタビューによると,台本を演技の直前まで見ないらしいが,それが一番の原因なのかもしれない.

もう一つの問題は,売れっ子の花魁役なのに,肝心の色気がないのだ.カッコイイと思うシーンはあるのだが….本人のキャラがそうじゃないので仕方ないと言わないで,別の人格も演じられる役者になって欲しいものだ.