グーグーだって猫である(T・ジョイ大泉)

大島弓子の「グーグーだって猫である」を映画化した作品.「金髪の草原」の映画化の時には比較的素直な脚本だったと思うのだが,今回は犬童一心監督のメッセージ性が強く,大島弓子という漫画家へのオマージュを込めた別の作品になっている気がする.大島弓子は姉が好きだったので私も読んでいたが,映画中で「天才漫画家」という言葉が出てくるように本当に天才だと思う.この作品では,その表現に挑戦しようとしている部分などがあるが,やはり大島弓子本人とはかなりかけ離れたものになってしまっているので,そこに違和感があるかもしれない.なお,映画中にもさまざまな作品(生原稿?)が写されるが,絵を描いている手は本人の手なのだろうか?
撮影は吉祥寺でおこなわれたが,さすがに知らない店とかは少しあるものの,吉祥寺に住んでいた人間にとってはおなじみの光景があちらこちらに出てきて,つい「あそこからあそこに移動したのか」と地図を頭に描きながら見てしまった.部屋の紙袋が三浦屋とユザワヤとか,非常に細かいところまで吉祥寺っぽい.
主演の天才漫画家・小島麻子役の小泉今日子は凄いの一言.作品の出来はさておいても,彼女が演じて,最後に「グッド グッド good good」を歌っているのを聞くだけでも価値がある.一匹目の飼い猫「サバ」(人間の姿の時)を演じるのは,なんと大後寿々花.監督が最初想定していたのは岸田今日子(!これも見たかった…)だったらしいが撮影前に亡くなってしまって適任を探していたところ,「セクシーボイスアンドロボ」を見て,急遽年齢を若くして彼女に決めたというから面白い.猫はとにかく可愛いの一言で,すぐ箱や紙袋に入るとか,家に帰ると玄関で待っているとか,猫を飼っている人には「こういうことあるよね」というシーンの連続.音楽は,ハミングキッチン,細野晴臣,高田蓮(←いかにも吉祥寺らしい!)で,非常に良いと思う.
大島弓子ファンにとっては,その思い入れゆえの好き嫌いはありそうだが,小泉今日子ファン・猫好き・吉祥寺好きな人は見逃すな.