Twitterのフォローと同類選択性

Twitterにほとんど書き込まない私が書くのもなんだが,Twitterのフォローの仕方には次の二種類があるように思う.

  1. 比較的似た相手を見つけてフォローする(例,友人,同業者,同じ趣味の人など)
  2. 自分と異なる優れたorこまめに情報を提供してくれる相手を見つけてフォローする(有名人,ニュース関係,企業の公式アカウントなど)

今までいろいろなネットワーク構造を分析してきた経験から推測すると,1はいわゆる社会ネットワークであり,次数(フォロー数,被フォロー数)相関などを見ても正になる(つまり,比較的近い次数の人同士が結びつきやすい)のではないだろうか.これに対して,2はWWWであり,次数相関は負,つまり被フォロー数が多い人を多くの被フォロー数が少ない人がフォローするようになる.
言い換えると,1は情報共有のためのネットワークである.つまり,同類の人達の間の発言を見て,彼らとの情報共有をおこなえるというもので,同類ゆえの背景知識や事前知識が活用できるので,短いメッセージであっても,さまざまなことが推測でき,かなり多くの情報が得られる.たとえば,「今論文の査読or執筆で忙しい」というようなメッセージであれば,その会議名が推測できてしまう.また,メッセージの発行頻度や内容で,その人の忙しさややっていることが推測できるであろう.しかも,同類ゆえに,「あの人が…をしているのだから,私も…」のように,自分の行動にも反映されることになる.
これに対して,2は情報収集のためのネットワークである.フォロー先との間との関係は薄く,多数のフォロー先から情報を収集する.また,このような場合の相手は頻繁に発言する傾向にあるので,膨大な情報がリアルタイムに得られることになる.
この二種類の方針はどちらもありえるし,実際にはその人のフォローの仕方でどちらが優勢なのか?という話になるだろう.ただ,ここで注目したいのはタイムライン変化速度である.人間の情報処理能力には限界があり,たぶんタイムライン変化がある程度を超えると,情報を取りこぼしてしまうという閾値が存在するだろう.もちろん,これは各個人,使っているアプリケーション,その時の忙しさなどの状況によって違う.ただ,上記の二種類の方針で言うと,2の方が圧倒的にタイムライン変化速度が早くなるということは体験的に感じているし,実験しても簡単に示せると思う.
もし,Twitterで1の方針で友人達のつながりを常に把握しておきたいというならば,タイムライン変化速度を閾値以下になるようにしておかないと,わざわざタイムラインを遡ったりして見なければならないし,それが面倒なら情報の取りこぼしが起こる.もちろん,2の方針で大量の情報を逃さないように短い間隔で常にチェックしている人達も多いだろうが,それはユーザにとってかなりハードな作業であり,向かない人もいるだろう.
Twitterが1の観点から面白いのは,同類の人達と「緩く」繋がれること,また友人の発言により,さらに友人の友人との出会いの機会を持てるように,「自分の近傍」が実現できていることだと思う.SNSの場合には,あまりに実人間関係との相互作用が強すぎ,それが単一のために,それが行動や心理的制約になって自由に発言できない現象が生じてしまう.mixiでも,これを解決するためにさまざまな機能を追加しているが,それはシステムの理解度や使いやすさを低下させることになってしまう.
Twitterの2の観点には,文章が短く,URLも難読化されていてURLから推測できるリンク先の情報を与えない問題がある.つまり,RSSと異なり,さらにリンク先に移動しないと言及されている情報が何なのかわからない.この作業は,ユーザの情報取得コストをさらに上げるだろう.
私は,最初2の方針で使って来たが,従来のRSSリーダによる情報取得との差や面白さがあまり感じられず,却って友人の書き込みを見逃したりして,ストレスを感じていた.そこで,同類とは言えない新聞社や有名人のフォローを解除して,かわりに友人達を追加した結果,タイムライン変化速度が低下し,面白さが感じられるようになってきた.Twitterにおいては,やはり同類選択性を持つネットワーウを優先すべきではないかと思う.
情報収集をどうするかについては,私は従来通りRSSリーダーを使っている.つまり,Twitterの同類ネットワークがリアルタイムのインクリメンタル処理なのに対して,RSSの異種ネットワークはバッチ処理なのである.現在のRSSリーダーは読み飛ばしに最適化されているので,これは比較的効率的にできる.最近「RSSは死んだ」と言われているようだが,pubsubhububなども登場しているし,私は必ずしもそうとは思わない.それは,今生き残っている技術…例えば,Unix(Linux),TCP/IP,HTML,HTTPなどを見てもわかるように,技術として完全なもの・より良いものは他に存在しても,実際に技術として普及するかは,また別のところにあるからだ.
他に,知人から目的に応じてアカウントを使い分ける方法を教えてもらった.これに従って,1と2という目的に応じてアカウントを分離し,それぞれの使い方に適した異なるアプリケーションを使い分けるという方法もあるだろう.特に2における問題をどのように解決するかは,今後の面白い課題ではないだろうか?