世界最速のインディアン(シアターアプル)

…と書きながら,また試写会に当選したので行ってきた(←本当に大丈夫かっ?).この前で味をしめて,見たいと思う試写会にいろいろと申し込んでいたのだが,これしか来なかったところを見ると,この映画の前人気はあまりよくないのだろう.

これは,21歳に購入したバイクをこつこつと改造してきたニュージーランドに住むバート・マンローが,63歳になんとアメリカ・ユタ州のボンヌヴィルで最高速チャレンジという生涯の夢に挑戦するという歴史的な実話なのだが,本当にお薦めだ!!!

まず,車好き・バイク好きの琴線に確実に触れる場面満載なこと.なんと彼の暮らしている小屋の詰まれたチューンナップ部品の残骸の山やピストンを自分で鋳造する姿から始まるのだ!彼は年金でこつこつとチューニングをしているために,お金を掛けたチューニング法とはまったく異なる方法を使うわけだが,これが見ものだ.なお,チューニングは総合力で答えは一つではないので,新しいアプローチに古いアプローチが打ち勝つというシーンは必ずしも珍しくない.たとえば,今回のような空冷V形狭角二気筒は最高出力は小さくても,全面投影面積の小ささなどで不利な点を補うことができるのだ.

次に,絵がきれいなこと.ニュージーランドで走るシーン,彼がボンヌヴィルのソルトフラッツに最初に降り立ったシーンなど,筆舌に尽くしがたいほどきれいなのだ.これは特に映画館の大画面で一見の価値がある.無骨なフレームに流線型のフレームを被せられたマンロー・スペシャル(映画用に三台レプリカが作られたらしい)も,素晴らしい美しさを見せている.やはり,ランボルギーニミウラやジャガーEタイプなどの流線型を意識して作られたものには,人間の美意識に直接訴えかけてくる不思議な力があると思う.

次に,ストーリが爆笑ものなところ.とにかく古いバイクの貧乏チューニング,貧乏旅で,しかも病気を抱えたご老体と来ているものだから,さまざまな困難が立ちはだかってくる.それを救うのは,バートの困難を恐れないで前向きに明るくチャレンジする姿と,すぐ誰とでも仲良くなってしまうその性格だ.すべての人…なんと警察さえも(笑)…味方にしてしまうバートの姿をぜひ見ていただきたい.

次に,とにかく最高速チャレンジシーンがエキサイティングなこと.私は本当に全身が硬直して見ていたくらいであった.

次に,台詞が素晴らしいこと.とにかく,感動物の名台詞満載である.これは日本語訳においても損なわれることがなく,映画の字幕が戸田奈津子というところで映画ファンの心をくすぐり,字幕監修がな,なんとモリワキエンジニアリング!というところでバイクファンの心を鷲づかみにするであろう.

最後に,バート・マンローを演じるのが,アンソニー・ホプキンスというところ.とにかく素晴らしい!人間というのは,年を取っても,こんなに素晴らしい仕事ができるものなのか!と感動するくらいだ.もちろん,こんな危ない撮影はスタントマンを使うわけだが,結構本人も走っているようである.

繰り返すが,銀座テアトルシネマやテアトル・タイムズスクエアで上映するらしいので,ぜひ見ていただきたい.ハリウッドのお金は掛かっているが,なんとなく気が抜けた大作とは一味違うよ.