夕凪の街 桜の国(シアターN渋谷)

広島を舞台にした,被爆者三代を描いた漫画の映画化.あまり原爆ということを前面に出さずに淡々と生活を描くが,そのかわり時々出てくる言葉や場面が重みを持っている.
平野皆実役の麻生久美子は,初期のはかなげな雰囲気が「時効警察」を機会になくなってきた気がするが,その代わりに表現力が広がって,過酷な状況でもそれを明るく肯定的に受け入れて生きていく女性の強さがうまく出ていたと思う.石川七海役の田中麗奈は,いかにも彼女らしい芯が強い女性の役.中越典子は,こういう影を持つ都会的な女性を演じさせるとうまいし,時代が変わっても同じ役を演じていたベテランの藤村志保は素晴らしかった.
なお映画を見た後で,ぜひ原作が読みたくなって買ってみた.

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

映画は原作を比較的忠実に描いていると思う.特に後半の桜の国は異なる時代を交互に描くという漫画ゆえの特殊な表現手法をとっているが,それを比較的うまく実現していたと思う.ただし,前半の夕凪の街のエンディングは結構作り変えていて,これが映画の質を高めたかどうかはわからないが,原作でかなり悲しい結末を迎えた平野皆実に,彼女の運命は変えられないにしても,ある種のハッピーエンドを迎えさせてあげることができたという点では気持ち的に救われる気がする.原作も映画もお薦めだが,まず原作を読んでみるとよいかもしれない.
なお,この映画で今年の目標の30本達成かな.