誰もまもってくれない(吉祥寺プラザ)
予告編を見て,気になっていた映画.佐藤浩市と志田未来という組み合わせは良いだろうと思っていたが,さらに木村佳乃と柳葉敏郎の複雑な心理を表現した演技は素晴らしい.さらに個人的に松田龍平の斜に構えた独特な雰囲気を持つ若い刑事役が非常に良かったと思う(当初の脚本では,こんな印象的な役ではなかったそうである).
さて,問題なのはストーリー.この映画では「インターネットユーザ=悪・とんでもない奴ら」という視点で描かれている.しかし,マスコミの取材の問題は最近のTBSに関するニュースなど枚挙にいとまがないくらい広く知られているが,某ちゃんねるでさえも犯罪者の妹もどんなひどいことをされてもかまわない…というような過激な大ムーブメントが起こっているという話は聞いたことがない気がするのだが….個々の(ネットに限らないような)犯罪的行為を除けば,(過激ではあるが)基本的に「未成年であっても,犯罪者はちゃんと罰を受けるべきである」,「子供の犯した罪の責任は父母にもある」という原則で動いているようだし,一時的にお祭り騒ぎをしたら飽きるような奴らという描写も,朝日新聞の低俗生地問題でマスコミが情報操作・情報隠蔽を量った事実を辛抱強く探り出して証拠を提示して,長期間に渡る抗議活動を続けたあの事実とは違っている.この犠牲になったのが新聞記者役の佐々木蔵之介で,彼は非常に妙な立ち位置におかれている.
この映画は,「ネットユーザを叩いて不安感をあおれば売れる」的な,最近よくあるステレオタイプ的なストーリーに乗ってしまって,それを無理矢理シリアスな方に持って行こうとしたために,逆に全体的に非常に軽く浅い印象を受ける.これでは,せっかくの役者の名演技が台無しだ.