二升ガールズ第10回記念講義 内田教授の百姓持論〜米・土壌そして百姓魂〜内田啓一郎氏・内田寿郎氏(松の屋・新宿二丁目)

ついに二升ガールズの集会も10回目.その記念に今回は日置桜にもの凄い酒米を納めている内田百種園の親子が上京して講演してくれた.しかも,今日のお燗番はなんとダンディ山根社長!同じテーブルになったのは,O塚屋のK子さん(笑),S井氏,O川氏,K藤氏.

料理は,山田錦のご飯,大根の炊いたの(内田氏の米のとぎ汁を使用),焼き物(レバー,砂肝,ハツ,ナンコツ),日置桜の酒粕(強力)を使った酒粕鍋,コシヒカリのご飯に漬物(松の屋の白菜+内田氏の奥さんのお手製漬物各種),日置桜の強力の酒粕を使った手作りスコーン by ayaya+梅ジャム by 内田氏の奥さん.今回は「米」を素直に前面に出したメニューで,特に大根の炊いたのと酒粕鍋が劇美味しい.また,通常酒米は美味しくないと言われるが,内田百種園の山田錦は食味値が95とコシヒカリより高いそうで,炊いても美味しいという不思議なお米だった.
お酒は以下の通り.

  • 日置桜 生酛 無濾過無調整純米原酒 18BY第23号 八頭町内田農園産山田錦(70%) 協会7号 詰口年月2008年3月(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 生酛 無濾過無調整純米生原酒 18BY第23号 八頭町内田農園産山田錦(70%) 協会7号 詰口年月2007年4月(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 鍛造生酛 山田錦 18BY第23号仕込 八頭町内田百種園産山田錦(70%) 協会7号 平成18BY 詰口年月2009年1月(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 八割搗き強力 純米酒 無濾過無加水調整 八頭町内田百種園産強力(80%) 協会7号 平成19BY 瓶詰年月2008年11月(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 生酛 八割搗き強力 純米酒 無濾過無加水調整 八頭町内田百種園産強力(80%) 協会7号 平成19BY 瓶詰年月2009年2月(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 五號 純米吟醸生原酒 八割搗き山田錦純米酒 八頭町内田百種園産強力(80%) 協会7号 20BY 詰口年月2009年2月(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 六號 純米吟醸生原酒 八割搗き山田錦純米酒 八頭町内田百種園産強力(50%) 協会9号 20BY(鳥取・有限会社山根酒造場)
  • 日置桜 八割搗き山田錦 純米酒 八頭町内田農園産山田錦(80%) 協会7号 詰口年月2008年1月(鳥取・有限会社山根酒造場)

実は,内田氏が本格的に酒米を造りはじめたのはつい最近だそうである.もちろん今まで自宅用に栽培していたものの,農業に関して根本的に考えを変えることになるきっかけを与えた人達との出会いもあり,今までの主力の葉たばこ栽培に見切りをつけ,本格的に米の栽培に乗り出したのが2004年.ちょうど酒米栽培のグループと知り合ったこともあり,食用米より高価格の酒米に乗り出したそうである.まず出荷したのが黄桜だそうが,ここで「今年の鳥取から仕入れた酒米でとんでもない凄い酒ができてしまった」という噂が伝わって来て(大手会社は,そういう仕入れに不利になるような情報は直接は言わないらしい),ものすごい勇気づけられたそうである.その後,谷本酒店の新潟出身の奥さんがこの米の価値を認めたこともあり,店主がダンディ山根社長に「知り合いで凄い酒米を作った農家があるが,使ってみないか?」と声を掛けたのが発端だそうである.
しかし,ダンディ山根社長も最初は「一年前から酒造計画も決まっているのに,そんな「作ってみました」なんていう農家の酒米なんか使えるか!」と思ったらしい(笑)つきあいで少量仕入れてみて,送られてきた成分表も信じないで独自に成分検査に出したところデータに間違いはなく,実際に作ってみたら凄い酒ができた!…ということで,現在に至るそうである.なお,千代むすびにも出荷しているそうだ(ただし,特に生産農家の表示はない).
さて,ダンディ山根社長によると,内田百種園の酒米は成分表が他の農家の酒米とかなり違う値を示すので,山田錦でも強力でも「内田米」と呼んで区別するのが正しいかもしれないそうだ.その違いは現在の農薬漬け・肥料漬けの農業から脱却した,植物や土地の力を最大限に引き出した農業(バイケミ農法と呼ぶらしい)から生まれるようである.たとえば,以下の特徴があるそうだ.

  • 一言で言えば「地表一寸の農業」.植物には地中深く垂直に生えていく雄根と地表付近に水平に生えていく雌根があり,前者は植物の成長に,後者は結実に強く関係する.内田氏の場合は前者を抑制し,後者に注力するそうである.
  • そのために過度な栄養分を与えない.芋を醗酵させたものや,藁を使う程度だそうである.ただし,地表の微生物を活性化するための竹パウダーは使うそうだ.
  • 現在の化学肥料を使うと窒素成分が多すぎて硝酸態窒素が増えて味が悪くなるだけでなく,雄根ばかり伸びて植物の成長の方にかなりの栄養分が回ってしまうそうである.内田百種園の稲は,稈長は通常の2/3程度の丈しかないが,穂長は長いのが特徴だそうだ.
  • 農業計画は,新暦太陽暦)ではなく旧暦(太陰暦)によって決める.たとえば植え付け時期は上限の月にするそうだ.昔から,生物の状態は月の満ち欠けによって支配されていると言われるが,たとえば,釣り人が月齢で釣行計画を決めるのは常識なように,植物も強く影響されるのだろう.

なお,配布された資料の写真の強力の稈長はるみちゃんとほぼ同じなのだが,もしかすると他の農家が栽培すると2mぐらいになってしまうのかもしれない.今までの酒米の品種改良で重要な点の一つは稈長を短くすることだったが,これは実は農学者によるマッチポンプだったという可能性もあったのかもしれないとふと思った.つまり,肥料を改良する→稈長が長くなる→耐倒伏性が低下する→品種改良して短稈化する→(元に戻る)というサイクルを繰り返してきただけではないか,そして品種改良につれて原種の持つ個性が薄れ,味も平均化したのでは?という気もする.
さて,他に以下のようなことが(笑)

  • 一緒のテーブルになったO塚屋のK子さん(今回はお客として参加)が来て開口一番「何,この濃いメンバーは…」(K子さん,一番濃いのはあなただ!(爆))
  • K子さんから,私のブログのせいで,いろいろな所で「恐子」,「強子」と呼ばれるようになったと苦情を言われる.しかし,このブログは知り合いぐらいにしか読まれてないし,そもそもこの呼び方を広めているのはイケメン蔵人の岡田氏なのに….さらに,最近は「酒蔵さんを顎で使う」とも言われているそうだ(←ここまで来ると完全に本人の問題(笑))
  • K子さんに「そんなに酒蔵に弾丸ツアーばかりしていて,ご主人は何か言いませんか?」と聞くと,「焼酎担当の主人は九州に行くので,距離はあまり変わりません」(爆)(追記:O塚屋日記から驚愕の事実が発覚!つまり,「本格焼酎のお蔵のある九州へ出かけることの多い主人と私の貯まったマイレージは実は同じくらい。」と書かれていることからして,比較対象は飛行機だけで,電車の移動は一切無視されていたのである(爆)さすがK子さん!!!)
  • ayayaのテーブルから,10分間隔で「山根社長〜!次は○○をお燗してくださ〜いっ!」(←ayaya口調で)という声が聞こえてくるが,私のテーブルはK子さんがいるので真面目な勉強モードに入っているのと,鳥頭性の高い(=すぐ忘れる)O川氏にお酒をお願いしていたので,全然来ない….O川氏は最近会社の愚痴が多いけど,私は上司の方に同情しちゃうかも…(笑)
  • ayayaをはじめ,すてきな着物姿の女性が多いのが二升ガールズ集会の良いところ.しかし,男性陣は情けなく,会社に出社していたT野氏はともかく,宵越しの記憶を持たないU島氏や鳥頭性が高いO川氏まで着物を来てこないなんて…(当然か(爆)).でも,内田啓一郎氏は素敵な着物姿だった.
  • 内田寿郎氏,すてきな着物姿のayayaを見て「もしかして,彼女がayayaさんですか?」.どうも,松の屋ブログを相当読み込んでいるらしい(笑)

今回は終了が22時過ぎで,二次会にコニーアイランドに行ったのはダンディ山根社長と内田寿郎氏以外には,K藤氏と私だけ.自宅に帰らなければならないK藤氏と私は途中で急いで抜けたが,私はなんとか吉祥寺で終バスを捕まえることができた.ちなみに武ママはジェフ・ベックのコンサートに行ってきたそうで,その日店内には流れていたのは"Blow by Blow".