某シンポジウム(T大Y田講堂)

朝からT大でウェブ関係のシンポジウム.なおY田講堂に入るのは初めてだったが,歴史があるだけあって,設備の古さが目立つ.まずテーブルは用意されておらず,椅子は小さくクッション性がなく,お尻が痛くないように姿勢を変えているとギシギシして煩い.しかもAC電源がなく,せっかく用意された無線LANも人数が多すぎて使い物にならない(結局ソフトバンク&ドコモの3G回線経由).これで,Twitter経由でしか質問を受け付けないので,会場にいる意味なかったかも.しかも,ライブ感はTwitterを見ていないと決してわからないという逆転現象まで生じていたのだから,会場にいた人は本当に大変だったと思う.実は途中で本気で会社に戻ろうかと思いましたぁ(爆)
しかし,それを逆に見ると,バーチャルな学会の開催という点で意義は非常にある.あえて会場に行く意味をなくし(爆),興味を持つ研究者とエンジニアによる自律分散的な協調にゆだねることで,より広く門戸を開くことができるのだから.インターネット中継が得意なグループは沢山あると思うので,そのような方向にあえて進むのも意味があると思う.ただし,その場合には対面のコミュニケーションというものはなくなるが,それはまた別途カバーするとか,懇親会だけ遠くから来やすい新宿・渋谷で開催する(爆)という離れ業もあるのかもしれない.
残念ながら少し遅れてしまったので,最初のM尾准教授の話は少ししか聞けずに,他の人から講演内容を聞いたのだが,なかなか素晴らしいと思う.ただ,進歩的な学術の場を作るという目的と,産学協同で交流し合える場を作るという目的は少々離反していて,一つの団体で同時に提供するのは難しいかもしれない.また,学会として論文誌の出版などの従来的な活動をおこなうか,従来のウェブ関連研究会との連携はするのか(それともそれを否定する大きな動きにしたいのか?),企業と連携してデータやAPIを提供するかなどの,実際的な側面はわからなかった.その辺は今後明らかにして頂きたいと思う.
なお,Twitterを見ていたら,ウェブ関連研究に関する基本的な知識に欠けていて,ポイントがずれた所で反応してしまう人が目立った.人数が多ければ専門家ばかりでないし,内容を詳しく説明できないので,それは当たり前なんだけど,ああいうのを適時補足できれば教育的に意義がありそうだ.
面白かったことは以下の通り.

  • 参加者のMacBook(Pro含む)とiPhone使用率は凄い!特にiPhoneはすごく,右を見ても左を見ても,ほとんどの人がiPhoneを持っているのだ!!
  • N尾先生がGoogleブック検索を容認したのはびっくり.確かに,今の日本の権利者のデジタル化への異様なほどの敵意と権利の過度の主張が,今後シフトしていくデジタルデバイスマーケットにおける収入の喪失と国立国会図書館のパンクを招いているのだ.まあ我々ユーザからしたら,「デジタル化されないものは不便だから見ないorそもそも存在しなかったものとする」という選択肢を選ぶだけで,努力しようとしない業界が衰退しようがいっこうにかまわないのだが,資料収集義務のある国立国会図書館としては避けるわけにはいかないのだろう.
  • PageRankについて相当誤解しているような気が…まあ一般的にはああいう「理屈がわからないけど凄い魔法のメソッド」なんだろうけど….
  • K藤氏,データ量は単純な方式の性能をカバーするという話.ただ,これはまさに数字のマジックで,いわゆる性能は上がっても,品質は必ずしも向上しない.結局大規模データをそのまま使うと大衆化(口語シフト)し,まともな文章を書くときの書き言葉との差が拡大してしまう.今後の大規模データの使い方は,目的に適したデータ群を抽出し,それを使ってもデータは以前として大量のまま…という方向性に向かう気がする.
  • N村准教授による講演中のTwitter投稿.まさか学生にやらせていたとは….
  • T田准教授,SLコマンドの作者をカミングアウト(笑)いや,その前から言うか言わないか悩んでいたようだが,D氏が最初に見事に笑いを取りに行ったのを見て決断したような気が….
  • Web技術(XML, HTML, JavaScriptなど)は,このような学会でどう扱われるべきものだろうか?M田氏の「盲亀浮木」のコラムにもあるように,現実のWeb技術と学術的研究の関係というのは非常に難しい.研究的バックグラウンドがないとムチャクチャになるし,かと言ってありすぎると役立たずになる.なお,APIの設計であっても,実際の現場では関連マニュアルや論文をかなり徹底的にサーベイしてたりするのだが,そういう努力は通常外からは見えなかったりもする.