訃報:杉浦日向子さん

まだ46歳.素晴らしい人生哲学を持っていただけに,非常に惜しい.

私は漫画家として知っているが,1993年から漫画家を引退して隠居生活に入っていた.それでも生活の糧を得るために江戸風俗研究家として最低限の文筆活動をしていたので,いろいろなところで彼女の発言を見ることができた.次のところに徹子の部屋に出た時のインタビューの記録が面白いので,興味を持ったら見て頂きたい.

http://www.h2.dion.ne.jp/~kinki-bc/z15-1-28.htm

たとえば,彼女は蕎麦屋が好きで,それも午後2時から4時ごろまでのまったりとした時間に,日本酒をゆっくり味わってから,蕎麦でしめるという粋な人だったらしい.また,彼女は蕎麦が好きだという人間を,ひたすら旨い蕎麦を求める「蕎麦好き」と,蕎麦屋でゆったりとしたリラクゼーションを堪能する「蕎麦屋好き」に分け,前者のような求道者な生き方ではなく,後者のような快楽主義な生き方を勧めるのだ.

私も,飲み屋に行く時は,混雑している時間はなるべく外して,開店直後または閉店直前に行き,そこで店の人間と話をするのが好きになってきた.また,おいしいお酒は飲みたいが,ある程度のレベルであればいいではないか,自然の恵みなんだから作りにばらつきがあるのはあたりまえ,まだ未熟な蔵の酒を何年も掛けて飲んで進歩しているのがわかるのも楽しみという気分になって,逆に酒の味の細かなところにケチをつけている人間を無粋に思うようになってきた.

ということで今日の夕食は追悼の意を込めて蕎麦.週末は,彼女の本を探して読んでみようと思う.