第5回 究極の静岡吟醸を愛でる会(ホテル虎ノ門パストラル)

S井氏に誘われて,第5回 究極の静岡吟醸を愛でる会に今年も行ってきた.出品酒は,たぶん22場55種類.公式ホームページの事前発表数とは違うが,それは「出世城」は配送ミスで当日までに届かず1場減だが,開運が確か一種類多く出していたからだ.
昨年の経験を生かして,開場前にもらったリストをチェックし,人気があり出品量が少ない開運の出品酒に近くに陣取る.確かに開運は大人気で,500ml瓶の出品酒はまたたくまに無くなってしまったようだ.基本的にメロンのよい香りがして,いかにも吟醸らしい味わいだが,微妙に異なるのが面白い
今年は全種類味わうことができた.特に気に入った蔵は,花の舞,國香,葵天下,開運,萩の蔵,萩錦,忠正,臥龍梅,富士錦,高砂白隠正宗だったが,もちろん他にも良い酒があった.なお温度が上がった後半でよい印象になったものもあったので,このような評価は本当に難しいと思う.
昨年も書いたが,私はしっかりした酒が好きで,それは今年に入ってからの燗酒マイブームでさらに拍車を掛けている.しかし,やはり若いときから飲んできた静岡の酒は好きであり,特に静岡らしい良い匂いでありながら酸がしっかり効いたものや,柔らかでいかにも純米らしきものが好きだ.このような出品酒は審査員の受けを狙って作るので,一般市販酒の方に私の好みのものが多かったりするのだが,このような技術の粋を尽くした酒を飲み比べると,各蔵が今何を考え,今後どういう方向に行こうと思っているのか,おぼろげながらわかってくる気がして興味深い.
仕込水を効くのも大好きなのだが,今年は5蔵(開運もリストにはあるが,出さなかったらしい)あった.英君の桜野沢の湧水は,微量の塩気が感じられた.私は正雪や英君などの由比の酒が好きなのは,この微量の塩分が関係したりするのか?
主催者の吟醸番氏が,この会の目的は「最高の静岡の酒を味わうこと」と「蔵の人達と直接いろいろな話をすること」と言っているように,運良く富士錦の専務と話をすることができた.昨年は極端に違う造りの4本を持ち込んでいたのだが,今年は比較的似た傾向の3本だったので,理由を聞くと,通常はわざと造りが違えて造り,市販時にブレンドして酒質を均一化しているそうだが,今年は自分たちの特徴を保ちながらも,出品先に合わせた造りをしてみたとのこと.そこに吟醸番氏がやってきて,「実は今年は精米歩合が40%よりも50%の方が評価が高かったという面白いことも起こったんだよ」とのこと.まあ,ある程度熟成が進んだ今では,40%の方が美味しくなったそうだが.元田酒の辻村勝俊杜氏の一番弟子が杜氏だそうで,確かにそれを彷彿させるような酒質になってきて,今後が楽しみである.静岡では篠田酒店が扱っているらしい.
今年は,「うさぎ」や「さかなや」の店主達も来ていたので,話をしたり,いろいろ教えて貰ったりして楽しく過ごすことができた.やはり,単に趣味で飲んでいるのと,仕事にしている人では全然見方が違う.なお「さかなや」名物のフジツボと亀の手を持ち込んできて,それを味わいながら飲めたのはうれしかった.
なお,アメリカ人日本酒ジャーナリストのジョン・ゴントナー氏も来ていたのだが,彼の日本酒感は日本人のものと違うのが興味深かった.たとえば,「外国人が客として来た時に,どういう酒を勧めるのがよいか?」という話になった時には,一つの例として発泡酒が話題に出た時には,「それはシャンパンと似ているので,相手の印象に残らないかもしれない.できればいかにも日本酒という酒をアピールする方が,強く印象づけられると思う.」のように答えていた.
さて,今年も酒を味わうことに集中して,料理は全制覇の目処がほぼついてきてから食べ始めたので,蕎麦,塩辛,塩辛のせ豆腐などしか残っていなかった.なお,今年も茹でピーナッツが大量に残っていて嬉しかったのだが,やはりこちらの人にはなじみがないのかなあ?…結構美味しいんだけどね.
最後に,こんな素晴らしいイベントを毎年企画してくれる吟醸番氏達主催者と,今年も誘ってくれたS井氏に感謝したい.