西の魔女が死んだ(T・ジョイ大泉)

原作は梨木香歩の児童向け小説「西の魔女が死んだ」で,大人の鑑賞にも耐えるように,非常にうまく映画化されている.設定,ストーリーは,日本児童文学者協会新人賞.新美南吉児童文学賞小学館文学賞を受賞した作品だけあって,まったく文句のつけようがない.美術監修・種田陽平美術監督・矢内京子という組み合わせで実現された世界は,着実で細かいところまで気を使っているだけでなく,女性らしいセンスが生かされた非常にすばらしいものになっている.音楽も非常に作品にマッチしていて,特にエンディングで流れる手嶌葵の「虹」は,曲調と彼女の独特の歌い方が,この作品を非常にうまく締めくくっている.
ほとんどがおばあちゃんを演じるサチ・パーカーとまいを演じる高橋真悠の二人の話なのだが,とにかく,サチ・パーカーが良い.なんとあのシャーリー・マクレーンの娘で,12歳まで日本にいたこともあって(「サチ」=「サチコ」らしい),上品な日本語とその醸し出す雰囲気がぴったりはまっている.特に心理的葛藤の演技は素晴らしい.高橋真悠徳永えりにちょっと似た感じのかわいい女優で,若いながらもしっかり演技している.ママ役のりょう,パパ役の大森南朋も,不登校の子供を持つ苦悩を見事に演じており,郵便屋役の高橋克美,ゲンジ役の木村祐一も個性派俳優として,しっかり役目を果たしている.元が児童向けなので刺激は少ないかもしれないが,この映画の穏やかな雰囲気と,特にエンディングは期待してもらっていいと思う.なお,私はこういう調理シーン・食事シーンが随所に出てくる生活感にあふれた作品(「かもめ食堂」とか)は個人的には大好きである.