二升ガールズ第6回集会「ザ・タケツルトシオの会」(松の屋・新宿二丁目)

今日は,石川杜氏と並ぶ竹鶴酒造のもう一人の伝承者,竹鶴敏夫専務招いての酒の会.店の前に無数の竹鶴のラベルで作られた看板がっ!るみちゃんも毎回よく考えるものである(笑).

なお,ドレスコードは「浴衣」.昨年同様の企画があったので,今年は私は浴衣を仕立ててあり,女性陣は今年も素敵な浴衣姿を披露してくれた.特に私の班の班長のayayaはお酒の会は着物か浴衣で来る(しかも緒川たまき似)ので,今回のように同じ班になると非常に嬉しい.しかし,目の前のU島氏やT野氏,別のテーブルのW辺氏も普通の服…どころか,浴衣を来ている男は私一人orz(なお,後日W辺氏はすぐ浴衣を買ったらしく,ブログで浴衣姿を披露していた.さすがである.)なお,私の浴衣は麻が混じっているので,とにかく涼しい.しかし,ayayaの浴衣は生地の目が詰まっていて少し暑いとのこと.同じ浴衣でも生地によっていろいろあるようである.
料理は,ざる豆腐,胡瓜の梅肉海苔巻,鴨肉焼?,枝豆と焼き茄子・トマト,串焼き(うずら,レバー),野菜サラダ?,さざえのつぼ焼き,炊き込み御飯?.
この日のお酒は次の通り.

  • 清酒竹鶴 純米 八反錦・加工用米(65%) 2006(平成18)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 清酒竹鶴 純米にごり酒 八反錦・一般米(65%) 2007(平成19)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 竹鶴 酸味一体 雄町純米 広島県産雄町(65%) 2004(平成16)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 竹鶴 酸味一体 雄町純米にごり(原酒) 広島産雄町(65%) 2005(平成17)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 小笹屋竹鶴 番外編 純米原酒 広島産山田錦(60%) 2001(平成13)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 竹鶴 純米原酒 広島八反錦(60%) 協会6号 2000(平成12)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 清酒竹鶴 合鴨農法米 門藤夢様 福富町産雄町(65%) 2006(平成18)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 小笹屋竹鶴 生もと純米原酒 仕込第19号 酵母無添加 雄町(65%) 2005(平成17)醸造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  • 小笹屋竹鶴 生もと純米原酒 6号酵母添加 八反錦(65%) 2005(平成17)醸造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)

さて,竹鶴は不思議な酒である.色が濃くしっかり熟成された伝統的な日本酒で,ここ数十年の日本酒の流行とは正反対なので,広島利き酒大会?で最下位になったことがあるそうだ.しかし,「日本酒はあまり好きじゃない」と言う人達が,これを飲んでいきなり日本酒好きになる場面に何回か出会った.一見かなりの日本酒通じゃないと受け入れられないと思うのは単なる先入観で,何百年も受け継がれ,磨かれて来た伝統的なこのような味こそが,醤油や味噌のように日本人が本能的に求める味なのかもしれない.しかし,時代の(一時的であっても)流行に逆らって商売を成立させるのは並大抵のことではない.
今,竹鶴を竹鶴たらしめているのは,単なる古典への回帰ではなく,古きを見つめて新しきを見つけているからであろう.昨年石川杜氏にお会いした時に,現代の手法と古典的な手法を徹底的に比較・分析し,よい部分を積極的に取り入れていることに感銘を受けた.つまり,昔と大きく異なるのは,昔は経験的・実証的にしか語られてこなかった技術や現象に対して,最新の成果に基づく分析が加えられていることである.これは一見地味でありながら,非常に理にかなった手法だ.しかし,研究開発においても,そのような実際的な研究は評価されず,単なる流行を追うだけの「中身がない」研究の方が評価されることが多い(そして,数年後には多額の予算を消費したあげく,使い物にならず,研究者も育たず,死屍累々という悲惨な状況しか残らない…)ことからわかるように,このような理想を貫いて行くことは非常に難しい.敏夫専務と会う前に非常に興味があったのは,蔵元としてそのような理想をいかにして現実のものにしているか?ということであった.
敏夫専務は,阪大で常温核融合(今ではすでに廃れてしまったが…)を研究した筋金入りの理系人間…そしてその経歴から容易に想像がつくように,筋金入りのオタクでもある(爆)「井のなか」に置いてあった半ダースほどの手書き!!!の「北斗の拳」ラベルの竹鶴でもびっくりしたが,今回も彼のオタク心に火をつけて脱線しないように,るみちゃんから事前に入念な注意と禁止ワードが伝えられていた(笑).しかし,本来(私と同様の(爆))研究系の理系人間なので,話好きの議論好きで,さまざまな話を聞かせてもらったので,るみちゃんが心配したことはおこらなかったようである(その分打ち上げで爆発したらしいが…笑).一番印象的だったのは,常に自分を第三者の立ち場に置いて,俯瞰で物事を観察していることだった.子供の時から蔵を継ぐように言われていたものの,一時期は廃業するということで父親と話がついて研究職を目指していたのに,父親が無断で新しく若い石川杜氏を雇って,しかもいきなり県議員選挙に出馬して当選しちゃうものだから,急遽呼び戻された…というのがこの仕事についた経緯で,いわばばりばりの研究者をいきなり酒蔵経営に放り込んだわけである.そのためか,すべての考え方が理系・研究系なのだ.石川杜氏は理想を追うタイプなので,それを支える蔵元は相当大変だろう…と予想していろいろ質問していたのだが,敏夫専務にとってはそんなことはないらしく,「今までの酒蔵経営には無駄が多いんです.」と一刀両断して,酒のラベルを例にとって丁寧に説明してくれた.一言で言えば,無駄を徹底的に排して合理化すれば,理想を追求しても,充分に経営が成り立つということだ.このような「こうやれば,こうなる」と物事を単純化して考えるのは理系人間の特徴だが,現実は決して理論通りにいくものではなく,「無理が通れば道理が引っ込む」の言葉通り,これを実際に実現するのは相当難しいはずだが,その苦労はまったく他人事という感じでさらりと言うだけだ.敏夫専務にとっては,酒蔵経営も単なる研究の一テーマにすぎず,論理的にアプローチすれば容易に解決できることなのだろう.あれだけ個性的な石川杜氏を支える蔵元も,とんでもない個性的な人だった!なお,私は竹鶴の方向性には不思議な親近感を感じていたのだが,それは石川杜氏と敏夫専務は,早大出身・阪大出身というどちらも酒造りに関わる人間としては異端のルートを歩んで来たゆえに酒蔵経営もかなり個性的で,どちらかと言えば技術系IT企業の戦略と基本的に同じだからなのかもしれない.
ちなみに今日記憶に残った(?)名言.

  • 挨拶は短く,しあわせは長く(by 敏夫専務,乾杯の挨拶として)
  • 君の手は,物を落とすようにできている(by ayayaの旦那らしい)

最後に業務連絡.会津若松のK田氏からS井氏のコレクション用にすでに廃業した「春高楼」の二升袋を預かっているので,今度会った時に渡すね.