百万円と苦虫女(シネセゾン渋谷)

予告編を見ただけではどんな映画かわからないだろうけど,簡単に言えば貯金が百万円貯まるごとに住まいを点々とする女の子とその弟の話(←これでもよくわからないだろうけど(苦笑)).「さくらん」の出来がイマイチだったのでタナダユキ監督にはほとんど注目していなかったが,この映画(脚本も担当)で完全に見直した.すべての人に受ける映画ではないけど,生き方が平均とはずれているとか,常に自分に自信がないという人達は非常に共感できるのではないか.現実によくあるように,姉も弟も最後まで救われないけど(爆),それでも生きて行こうという気にさせてくれる.タナダユキ監督が,鈴子は最後まで不幸だけど,二十歳ぐらいで人生のすべてをわかった気になったらだめだとどこかで語っていたのを読んだ記憶があるが,まさにそのような感じだ.
役者は非常に良い人ばかり.森山未來はいかにも普通の青年をうまく演じていて,この年代の男優ではやはり出色だと思う.姉弟の関係もこの映画の注目どころで,弟役の齋藤隆成も結構良いなあと思っていたら,「博士の愛した数式」のルート(子供時代)役や,「光とともに…自閉症児を抱えて」の自閉症児役なども演じていたらしい.他にもピエール瀧笹野高史佐々木すみ江平岩紙など,個性的で素敵な役者達がしっかり支えている.よくあるプロダクションの力が強いから入ったんだろうけど…と嘆きたくなるような配役はまったくないのが凄い.
音楽もなかなかで,エンディングに流れる原田郁子の「やわらかくて きもちいい風」もよく映画の内容や雰囲気に合っている.なお,映画撮影時に役者とスタッフがラストシーンを撮影している時にみんなで歌っていた曲は,中島みゆきの「ファイト!」だったらしい(実は私はそれがエンディングに流れると思っていた).さすがにそこまでとは言わないが,なかなかの名曲だと思う.
最後に,主人公の鈴子役の蒼井優だが,売れっ子女優としては珍しく「私きれいです!」,「私かわいいでしょ!」的なオーラが漂わない受け身的な雰囲気と,彼女に当て書きして作られた役「鈴子」がよく合っている.特に「苦虫をかみつぶしたような笑顔」はなかなか見もの.ところで,彼女はこれが最後の主演作だと覚悟しているらしいが,私はそんなことないような気がするけどなあ….ちなみに,この映画は「また」入浴シーンがあり,最近一部で由美かおるに次ぐ「入浴女優」になると囁かれているらしい.すっぴんでもきれいで,変に色っぽくないところが彼女の入浴シーンの良いところだと思う.
この映画の良さを一口でうまく言うことはできないけど,とにかく落ち込んでいる時に特にお勧め!(もしかすると,もっと落ち込むかもしれないが…(爆))