某研究会一日目

この研究会はさすがで,今回も参加者は100人は軽く超えたのではないか?なにしろ懇親会だけで約50人なのだから.企業系の参加者も多く,議論も活発である.萌芽的なアイデアを出して議論し,熟成したらレベルの高い会議や論文誌に出すというサイクルを実現しようとしているのは素晴らしい.最近学会の研究会が悪く言われることが多いけど,それは研究会の運営方針で大きく変わり,ここは成功している良い例だろう.
なお委員長から4年越しで頼まれ続けていて,ついに実現したというチュートリアル「ウェブインテリジェンスを支える XML (再) 入門」が面白かった.資料は後日全部公開されるというので,それを見てみるとよいだろう.私は今までXMLデータベースの必要性がよく理解できなかったのだけど,個人的な解釈では,結局まずXMLデータありきで,それをスキーマを再定義せずに,とりあえずデータベースにぶち込むという要望が多いのではないか?そして,検索に適したスキーマの作り直しをしないことにより問題が多発するので,検索時に木構造を柔軟に扱えるようにして帳尻を合わせているのだろう.また,今までRDFが何なのか書籍を読んでもよくわからなかったのだが,「XML木構造RDFは有向グラフ」だと説明されて疑問が氷解(木だけ説明して,森を見させてくれない書籍だったなあ…).講演者もメタデータは今後も重要だけど,RDF自体はどうなるかかわからないと言っていたが,有向グラフはより柔軟に表現できるが,木構造の方が簡単で高速に処理できて理解しやすい…そして何よりも木構造でも9割以上の用途がカバーできるという点で命運が決したと思う.結局,標準というのは「ちょっと足りないくらいがちょうど良い」のである.ほとんど使われない機能のために,肥大化,複雑化,実装や理解の困難化を招くようでは,「標準」としての意味がない.誰でも使えるもの,普通に使われているものでなければならないし,それで足りない場合に初めて別の手段を使えばよいのだ.なお,そもそも有向グラフのはずのRDF木構造で無理矢理表そうとしているところにRDF/XMLの根本的な問題があるので,RSS 2.0などで排除されたのもやむなしらしい.T.B.Lは自分の成功の理由を理解できていなかったために,Web技術を相当迷走させてしまったようだ.
追記:「DAG(Directed Acyclic Graph)」と書いていたが,講演者から直接RDFは単なる「有向グラフ(Directed Graph)」(二つの違いはサイクルを許すかどうか)という指摘があったので修正した.わざわざ指摘してくれて,どうもありがとう.