遊穂利き酒会(荻窪・いちべえ)
某全国大会の原稿〆切一日前だというのに,〆切が伸びることに掛けて!(←あえなく予想が裏切られたorz)「いちべえ」に遊穂の利き酒会に(爆)この店の利き酒会は基本的に平日なこともあり,実は出るのは初めてだが,「遊穂」なので何を犠牲にしても出たいと思ったのだ.なにしろ,この日の参加人数は108名なので,壮観である.一人当たりのスペースが少々狭いのだが,逆にそれがお互いに酒を酌み交わしたり,話をするのにちょうど良い.
勝手がわからないので少し早めに行くと,ラッキーなことに,ちょうど横道俊昭杜氏と藤田美穂蔵元が来るところだったので,まず最初に簡単に挨拶.藤田蔵元によると,最初は一人で来る予定だったのだが,私が来ることを聞いて横道杜氏が俺も行く!と言ってくれたらしい.単なるリップサービスだと思う(爆)が,今や能登四天王を継ぐ若手のエースになってしまった名杜氏(能登杜氏自醸清酒品評会ですでに二度の首席!)に言われると,それでも嬉しい.
さて,料理は冷奴,肉じゃが,天麩羅,鶏肉焼,山芋たんざくとじゅんさい,甘エビの刺身,おにぎり.
この日のお酒は以下の通り.一つ感心したのは,「冷や(常温)」で「冷酒」で飲用温度を使い分けていて,火入れは常温で,生酒はそれより少し低めの温度で提供されたのである.さらにお燗も可で,自分用のちろりをガメてお燗つけ放題だった.
いわゆる「無濾過生原酒系&お燗お断り」のお店は,生老ね対策のために貯蔵温度がかなり低くなっているのに飲用温度を気にしない店ばかりで,徳利ならともかくコップ酒だと最適温度にならないうちに呑み切ってしまう.日本酒は基本が一升瓶なので,予約されても瓶ごと最適の温度にしてお客をお待ちするのは難しいことは理解できるが,酒器の選択やお客へのアドバイスなど,まだまだできることは沢山あるはずだ.どうすればそのお酒の一番美味しい温度で呑めるか?ということまで気を配ってくれる,このような店がもっと増えて欲しいと思う.
最近は大吟醸はあまり呑まないが,今回呑んだ「ほまれ」は以前よりも香りと味のバランスがよくなっていたと思う.寝かせると良くなりそう.
純米吟醸はナッツのような香りがあり,なかなか面白い.これは19BYもお燗よりも常温の方がよく,ワイングラスで呑むのが向いているだろう.白ワイン好きにはお薦めの一本.
他に特に良いと思ったのは,やはり山おろし純米19BYとゆうきのゆうほだ.
- ほまれ 大吟醸原酒 能州乃露 兵庫県黒田庄「躍感塾」産山田錦(40%) (石川・御祖酒造株式会社)
- 遊穂 純米吟醸 山田錦・美山錦55 麹米:兵庫県黒田庄「躍感塾」産山田錦(55%)・掛米:美山錦(55%) 日本酒度+3 酸度1.6 19BY 製造年月22年4月(石川・御祖酒造株式会社)
- 遊穂 純米吟醸 山田錦・美山錦55 無ろ過生原酒 仕込9 麹米:兵庫県黒田庄「躍感塾」産山田錦(55%)・掛米:長野県上伊那郡紫芝農場・有機米美山錦(55%) 日本酒度+6 酸度1.8 20BY 製造年月22年4月(石川・御祖酒造株式会社)
- 遊穂 純米酒 無ろ過生原酒 仕込12 麹米:石川県産五百万石(60%)・掛米:石川県産能登ひかり(55%) 日本酒度+6 酸度1.9 21BY 製造年月22年4月(石川・御祖酒造株式会社)
- 遊穂 純米酒 麹米:石川県産五百万石(60%)・掛米:石川県能登産能登ひかり(55%) 日本酒度+6.0 酸度1.8 製造年月21年6月(石川・御祖酒造株式会社)
- 遊穂 純米酒 山おろし純米 麹米:石川県産五百万石(60%)・掛米:石川県能登産能登ひかり(55%) 日本酒度+5.5 酸度2.0 19BY 製造年月22年4月(石川・御祖酒造株式会社)
- 遊穂 純米酒 山おろし純米 無ろ過生原酒 麹米:石川県産五百万石(60%)・掛米:石川県能登産能登ひかり(55%) 日本酒度+5.0 酸度2.3 21BY 製造年月22年4月(石川・御祖酒造株式会社)
- ゆうきのゆうほ 純米酒 山おろし純米 無ろ過生原酒 長野県上伊那郡紫芝農場・有機米美山錦(60%) 日本酒度+4 酸度2.2(石川・御祖酒造株式会社)…未発売・参考酒
- ほまれ 特別限定特撰大吟醸 能州乃露(のうしゅうのつゆ)(石川・御祖酒造株式会社)…お客が持ち込んだお酒.遊穂が生まれたより昔の「ほまれ」
横道杜氏や藤田蔵元が来てくれて,結構長時間話し込んだ.
- 藤田蔵元が,イラスト入りのすごく素敵なお酒のリストを作ってくれていた.これを見ると,「遊穂」の本質は「だらだら呑める酒」,「豚肉に合う酒」ということのようだ.決して派手ではないけど,常に人間に寄り添って,生活を豊かにするお酒を目指しているのだろう.もしかすると,これは「家に帰って,福山雅治の音楽を聞きながらとりあえず大好物のチーズで乾杯.そのうち調子が出てきて,豚肉を焼いたり,お燗しているうちに意識を失い,気が付いたら朝日が差し込む中に空の一升瓶が転がっていた…」なんていう藤田蔵元の日常から来ているのかもしれない(笑)(←あくまで想像ですからっ!!!)
- 横道杜氏が売りたいと思っているのは,山田錦・美山錦55の純米吟醸だが,実際に売れるお酒は違うらしい.原因はよくわからないらしいが,これは白ワイン的なので,日本酒呑みには受けにくいのか?
- 今年の造りから,美山錦を長野県上伊那郡飯島の田切農産の紫芝さんが育てた有機米に切り替えたらしい.今までの農協経由のお米は品質のばらつきが大きくて苦労していたが,今年は契約農家に変えたことから造りが安定すると共に,かなり違う味になったらしい.実を言うと私は美山錦という酒米はあまり好きではないのだが,「ゆうきのゆうほ」は米らしいふくらみがあるよい味になっている.今後期待大.
- 横道杜氏が将来的に作りたいのは「お燗して美味しいお酒」だそうだが,まだ到達していないということを言われていた.「だらだら呑めるお酒」としては,今の山おろし純米は最高だと思うが,その目指すお酒も楽しみだ.
- 「遊穂」の素晴らしいと思うのは,火入れを寝かせて最適の熟成状態で出荷しようとしていることだ.今回呑んだ19BYは普通に出荷されているものだが,まだ生産量が少ないために宮田酒店のような一部のお店でしか入手できない.しかし,そろそろ体制が揃ってきたので,もっと広く売れるようになるそうだ.「遊穂」の一番の魅力は食中酒としての熟成火入れになると思うので,その魅力が広く知られるようになって欲しい.
- 「ゆうほのしろ」とか,最近は新しいネーミングのお酒も増えてきたのでどうしたんですか?と聞いたら,単にみんなで一緒に考えているらしい.藤田蔵元と横道杜氏の二人に独立に言われたが「花さかゆうほ」が一番気に入っているそうだ.
- 「べっしゃん」のブログに「よこみちのぱしり」という名前で書き込んでいたのは,やはり藤田蔵元だったっ!(笑)横道杜氏本人は,何も知らず.
最後に,これだけの大人数でありながら,しっかりした酒の会を開いてくれた「いちべえ」の人達と,美味しいお酒を持ってきて,みんなと話してくれた藤田蔵元と横道杜氏に感謝したい.