泉橋酒造見学

「ひまり屋」の加藤氏に誘われて「泉箸酒造」に.行く時間がいつまでも確定せず,11:30頃に13:00集合という連絡が来たので,泣きながら海老名駅に向かったところ,彼らも渋滞で少し遅れたので,ちょうど海老名駅で合流できた(笑)
泉箸酒造は一般消費者として何度も来ているのだが,今回は飲食店と酒販店という専門家と一緒に来ていることもあり,酒米に関することとか,普段では聞けない話がいろいろ聞けた.
一言で言えば,これからの酒造りは米作りと切っても切り離せなくということを実感した.食糧法の改正により,酒蔵が自ら作った米で日本酒を作ることに関する問題はなくなったこともあり,泉橋酒造は地元の農家と「さがみ酒米研究会」を結成して,地産地消&よりよい酒米作りに取り組んでいた.そこで得たノウハウをいろいろ聞いていたが,窒素を多く含む化学肥料は,酒米の丈が高くなり倒伏しやすくなり,タンパク質が増えて味が落ちるために酒米作りに適さないという,近代農業の常識に反する話が興味深い.実は,日置桜に酒米を提供している内田百種園も同じ話を聞いているが,結局山田錦や雄町は短稈でないことが問題なのではなく,そもそも近代農業と違う方法で「小さく育てる」酒米だったのである.このような結論は酒造りだけでなく米作りから一緒に取り組まないと得られないだろう.
さらに重要なのは,収益性である.良い酒米は,農家の経営が健全でなければ育てられないので,妥当な値段で多くの酒米を買い上げるシステムが必要だ.泉橋酒造はそのシステムを実現した結果,買い上げた酒米をすべて有効活用するために,全量純米という結論に自然に到達したそうだ.農家の現状はかなり悲惨なので,農協まかせにしていたら良質な酒米を安定して確保することはますます難しくなるだろう.橋場社長は「全量純米にしたら,使う米の量は同じでも,出荷量が半分になった」と笑っていたが,飲み手の側も,経済的余裕がある場合はなるべく純米酒を選んで,農家に還元することを意識してもらいたいと思う.醸造用アルコールを生産する大企業に資金が流れても,酒造業界にとってプラスになることはないのだから.
なお,せっかくの酒米を大事に使いたいということで精米機を購入して,それにより高品質でしっかりした味があるお酒を,扁平精米+低精白で作るということにもチャレンジしていた.もともとついていたプログラムを元に,泉箸酒造オリジナルプログラムを開発して使っているそうだ.ちなみに,この精米機は,怖くてとても値段が聞けないほど立派だった(笑)
最後に,最近泉箸酒造が出している「酒蔵の味噌本」はなかなかの力作なので,見かけたら貰うことをお勧めする.橋場社長も「実は味噌以外の話が多いんですよね…」と言っていたが,米作り・大豆作り・酒造りなどの話以外にも,味噌や大豆を使った料理のレシピなども掲載されていて,なかなか侮れない.