竹鶴生酛だけを楽しむ会(串駒房・大塚)

ある日「新八」のいけちゃんがTwitterで次のように呟いていた.

確定ではないですが、個人的に27日に竹鶴(きもと)の会をしようかなとか考えてます。ただし詳細は決まってません(笑) 言えることは練馬区で予算もそこまでは高くないってことです。この時点で興味のあるかたいますか?

竹鶴生酛はかなり高価で知られているのに個人的なイベントで予算も安いので,「カイ燗」でこけちゃんに会った時に言われたように「かなりショボイ会」(爆)かもしれないと私も思ったのだが,いけちゃんと呑み友達だし,大塚屋の京子さんからも「27日は参加しますよね?」と念押しされた(参加人数がキビしい時の連絡多し(爆))ので,参加することにした.
この日は会社を早目に退社して,以前から京子さんに料理が美味しいと勧められていた大塚の「串駒房」に行く.ただし,この店は駅からちょっと離れていて周辺に目印が少ないこともあり,迷ったり店の前を通り過ぎた人が多かったので,行く時には少し注意すべし.

店内に入ると,いけちゃん,京子さんの他に,昨日会ったばかりの竹鶴の石川杜氏がいたので,さっそくご挨拶.他に,まき子さん,ayaya,「ひまり屋」の富さん,U島氏などのおなじみの酒友達も.
次の石川杜氏とお酒の写真を見て欲しいが,なんと生酛を作り始めた16BYからはじまって17種類もあり,ラインナップの見事さにはびっくりした!どうも,哲也さん・京子さん夫妻の秘蔵コレクションも若干混じっているのではないか?という気がする.いけちゃん,京子さん,こけちゃんの「かなりショボイ会」なんて台詞に同意してごめんなさい(←責任転嫁?(爆)).

  1. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第15号 八反錦(65%) 酵母無添加 2004(平成16)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  2. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第20号 八反錦(65%) 協会6号 2004(平成16)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  3. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第19号 広島県産雄町(65%) 酵母無添加 2005(平成17)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  4. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第35号 広島県産雄町(65%) 酵母無添加 2005(平成17)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  5. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第14号 広島県産雄町(70%) 酵母無添加 2006(平成18)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  6. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第4号 広島県産雄町(70%) 酵母無添加 2007(平成19)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  7. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第9号 広島県産雄町(70%) 酵母無添加 2008(平成20)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  8. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 仕込み第11号 広島県産雄町(70%) 酵母無添加 2008(平成20)酒造年度 (広島・竹鶴酒造株式会社)
  9. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 木桶仕込 仕込み第9号 広島県産雄町(70%) 酵母無添加 2009(平成21)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  10. 小笹屋竹鶴 生酛純米原酒 木桶仕込 仕込み第10号 広島県産雄町(70%) 酵母無添加 2009(平成21)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  11. 小笹屋竹鶴 生酛純米吟醸原酒 福岡県産山田錦(麹米:40%・掛米:50%) 酵母無添加 2006(平成18)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  12. 小笹屋竹鶴 生酛純米吟醸原酒 福岡県産山田錦(50%) 酵母無添加 2007(平成19)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  13. 小笹屋竹鶴 生酛純米吟醸原酒 広島県産八反(50%) 酵母無添加 2008(平成20)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  14. 小笹屋竹鶴 生酛純米吟醸原酒 木桶仕込 広島県産八反(50%) 酵母無添加 2009(平成21)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  15. 小笹屋竹鶴 生酛純米大吟醸原酒 兵庫県山田錦(50%) 酵母無添加 2007(平成19)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  16. 小笹屋竹鶴 生酛純米大吟醸原酒 広島県産八反(50%) 酵母無添加 2008(平成20)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)
  17. 清酒竹鶴 生酛純米 広島産雄町(70%) 酵母無添加 アルコール分15.6 2006(平成18)酒造年度(広島・竹鶴酒造株式会社)

このラインナップで特筆すべきは1.この前大塚屋で竹鶴生酛を試飲した時に,京子さんに16BYはそろそろピークが過ぎはじめているかもしれないと聞いていたが,やさしく,丸く,繊細な味に化けていた.なお,17BY以降の雄町は,もう少しピークが遅くなるかもしれないそうだ.
これに対して,21BYの純米はかなり味が若く,出荷されてすぐ飲んではいけないお酒なんだなあ…ということを感じさせた.その中でも9号純米はかなりのやんちゃだったのに対し,純米吟醸はかなりのまとまりを見せていたと思う.
これらを呑んで,竹鶴生酛は選んで買うものではないのでは?という感じがした.特に純米の新酒は荒々しすぎて,数年後にどれがどうなるか予想が難しく,逆にあまり選ばないで,数年後にどうなったのか?を楽しむのが良いのかもしれない(←大塚屋の策略にうまく嵌ってしまった?(笑)).
これらの酒に合わせた料理は以下の通り.

  • 白菜の煮物

  • 鮭の西京漬焼

  • 天ぷら盛り合わせ.ひらたけ,なめたけ,黄色人参など,どんどん追加されてきた.

  • おでんの汁.これを燗酒に合わせるのが良いらしい.

  • おでん盛り合わせ




  • ちりめんせんべい

  • 漬物

  • へしこの茶漬


さて,石川杜氏の話のポイントをざっと書いておこう.

  • 「小笹屋」の定義は,無濾過,原酒,瓶貯蔵である.
  • 生酛にいろいろ教えてもらって,酒造りに対する考えが変わって来た.
  • こういうお酒が受けるとか,こういうお酒が賞を獲るとかは一切考えないで,「狙わない酒造り」を目指している.たとえば昨日素晴らしいビンテージ物のマデイラワインを飲んだのだが,彼らも100年前にこういうお酒になるとは考えていなかったはず.
  • 酒造りは「しつけ」である.どう育つかはその子次第.ただし,最低限のことは教えてやらねばならない.
  • 自然を相手にした酒造りをしたい.ただし,自分は自然ではないが,例えば盆栽は人間が手を加えるから自然ではないと思われるかもしれないが.国後島蝦夷杉が10年でほとんど成長しないように,実は自然はのびのび育つわけではなく,逆に非常に厳しいので,本当の盆栽は過酷なストレスを与える点で自然そのものなのだ.
  • 山廃は省いちゃいけないものを省いている.そのために,山廃を造る杜氏には名人が多い.(←この辺詳しく思い出せず…orz)
  • 酒造りに常にイチローが必要なようではダメだ.
  • 16BYで酵母を添加した瞬間に後悔した.
  • 日本酒は江戸時代中期〜後期がピークだったと思う.明治維新があったので,そのピークは長く続かなかった.ただし,ピーク=完成度ではない.
  • わからないことをなくしてきたのが,日本酒業界の失敗.
  • 今まで忘れられないお酒は,能登杜氏の四天王の一人である三盃幸一杜氏が造った「満寿泉」で,日本酒の可能性を感じさせるお酒だった.(補足:「可能性」というのは,単純に美味しいとかいう話ではなく,何かを感じさせてくれるということ)
  • RCCラジオのバリシャキは楽しかった.スタッフの人達もどんどん仕事感がなくなっていった(爆)
  • 絶対的に美味しい酒はありえない.だから,美味しい雰囲気で美味しいお酒を呑むようにしたい.

さらに,京子さんの名言(迷言?)を一つ.

  • 「私,今まで飲み会の後に人を送った経験はあるんですが,人に送ってもらった経験はないんです.」(爆)今まで,自分より酒が強い人間に会ったことがないとはっ!(爆)

なお,石川杜氏から,次のようなお願いがあったので,皆さんもぜひ心に留めておいて欲しい.

ちょっとずつ楽しみをみんなと分かち合うような呑み方をして欲しい.
楽しさを下支えするために,美味しさがあるのだ.

この会を主催したいけちゃん,黒幕の京子さん,遠くからわざわざ来て頂いた石川杜氏,そして美味しい料理を提供して頂いた「串駒房」の皆様,どうもありがとうございました.


蛇足:「串駒房」の店内の壁には,いろいろな有名人や酒造関係者のサインがある.その中でひときわ大きく目を惹くのはラズウェル細木氏.

燗酒ファンのアイドル,「辨天娘」の太田陽子さんのサインもある…が,大きく書いてください!とお願いされたのに,いつものように遠慮して小さく書いてある(笑)

どこかに「京子参上!」というサインがあるかと思ったが,黒幕は証拠は残さないらしい(笑)たぶん,今回石川杜氏のサインも追加されたと思うので,どこにあるのか探してみよう!