日本酒の飲み方

日曜日に蕎麦屋で呑んでいて,日本酒の飲み方には次の3種類あることを再確認した.

  1. 日本酒単独で味わう.
  2. 料理を食べた後に日本酒を飲み,口中をすっきりさせる.
  3. 料理が口中にある時に日本酒を飲む,あるいは料理の余韻と一緒に味わう.

それで,1は別として,特に2と3は,お酒によって大きく分かれる.2は,口中の脂分を流して,口中をすっきりして,次の料理に備えるもので,これには冷やした日本酒,発泡する日本酒などが合う.3は,料理を一緒に味わうもので,常温・お燗の香りが控えめの純米酒純米吟醸酒などが合う.
そこで,最近の私の飲み方は2から3に完全に移行していたようだ.日曜日に気が付いたのは,料理をつまみに南の吟醸酒を飲んでいる時に,なぜかお猪口を持っている右手を無意識のうちに何度も押し留めている自分に気が付いた.ここで2の飲み方をしていることに気が付いたので,3の飲み方に切り替えたら,とんでもなくまずい….この理由は,いくつか考えられて,一つは香りがきつすぎたこと(たぶんアル添によるきつさも含まれる),もう一つは料理の温度に対して冷たすぎたこと(極端な温度差が味覚を混乱させた)だと思う.つまり,その料理と合わないことを無意識のうちに自覚していたからこそ,飲もうとしなかったのである.いわゆる吟醸酒を冷やでしか飲まない人・飲ませない店の中には,酒単独の美味しさ(および料理単独の美味しさ)を語ることがあっても,料理とのマリアージュを言う人がいない(少なくとも私は聞いたことがない)理由が,これで自分の中ではっきりした.
逆に,2の飲み方では,料理との相性はあまり関係ないということであり,常温やお燗の良さがわからない人たちがまだまだ多いのは,どうも飲み方が非常に関係していそうである.つまり,吟醸酒だけを飲む人たちの大半は2の飲み方をしているのではないかと思うし,それと同じ飲み方では常温やお燗に向いている純米酒の良さがわからないと思う.実は,2の飲み方が代表的なお酒は,ビールや焼酎である.3の飲み方には向かないことが多いが,その刺激性の高さから2の飲み方には非常に…日本酒以上に…合う.つまり,2の飲み方をしている限りでは,ビールや焼酎に負けて,日本酒離れが生じても仕方ないだろう.日本酒を扱う店としては,3の飲み方を客に意識的に教えることが必要なのだと思う(実際に,すでに3の飲み方をしてくださいと教えてくれる店もある).
なお,3の飲み方は,温度が非常に重要な要素になる.吟醸酒が普及した商業的な理由として,希少性を理由に高価格で販売できることと,冷蔵保存したものをそのまま出せばよいという手間のかからなさがあると思うのだが,それだけでは日本酒離れを加速させるだけかもしれない.今後は,日本酒を出す料理店は,(井のなかのように)料理との相性に応じて冷たい酒から熱燗まで使い分けて,酒と料理がお互いに引き立つようにする店が増えていくことを期待したい.料理だけでなく,日本酒も手間を掛けてナンボであろう.