第3回 酒べ会 〜蔵人と叫べ〜(東伏見・居酒家べっしゃん)

第三回目の酒の会は,小林酒造の小林専務を迎えての鳳凰美田の会.
料理は,野菜サラダ,枝豆,モツ煮,ワカサギの天ぷら,おにぎり(ゆかり入り),おまかせパレット(鶏のささみの炙り,ホタテ刺,鯛刺,生しらす,鰺刺,蛸刺,のれそれ,平目の昆布〆,鮪刺),小茄子の漬物,マンゴーアイス.味も量も充分.
当日の酒は以下の通りで,さらに仕込水あり.酵母酒米の違いがわかるように選ばれており,ラベルがない番号だけ書かれた酒が4本もあった.

  • 鳳凰美田 大吟醸 「別誂至高」 19BY 山田錦(35%) 17.8度 +3 1.4 自社酵母(栃木・小林酒造株式会社)常温
  • 鳳凰美田 大吟醸 「別誂至高」 15BY 山田錦(35%) 18.1度 +3 1.4 自社酵母(栃木・小林酒造株式会社)常温,燗
  • Phoenix 純米大吟醸原酒 愛山(45%) 17.8度 +2 1.6 自社酵母(栃木・小林酒造株式会社)常温,燗
  • 美田鶴(みたつる) 純米吟醸 槽中取り (地元限定酒) 美山錦(55%) 17.8 +3 1.6 自社酵母(栃木・小林酒造株式会社)常温,燗
  • 純米吟醸 (非売品) 山田錦(50%) 16.8度 +3 1.5 明利酵母(栃木・小林酒造株式会社)常温
  • 純米吟醸 (非売品) 山田錦(50%) 16.8度 +3 1.4 山形酵母(栃木・小林酒造株式会社)常温
  • 純米吟醸 無濾過生 発泡にごり酒 雄町(50%) 15.8度 +8 1.5 自社酵母(栃木・小林酒造株式会社)冷酒上澄み,上澄み+澱,澱の燗

小林専務は,キャラが濃いので,普段は社長(父親)にまかせて人前にはあまり出ないようにしているという話(確かに発言を聞いているとかなり危険な香りが…(爆))だが,今回は別府氏と宮田酒店のおかげで,貴重なお酒を呑み,以下のような有益な話を聞かせて頂いた.

  • 鳳凰美田」という名前は,栃木県下妻郡三田(みた)村の「三田(→美田)」から取ったとのこと.
  • 小林酒造は井戸水が豊富な地域にある.昔は井戸水は水温が低い場所は農作物の生育が悪いので低く見られていたが,酒造りには適していてよい.
  • 専務が実家に戻ってきた12年前(?)は250石だったが,彼が立て直した結果,現在は1,000石まで増産できた.なお,作っているのは吟醸だけ.
  • 日本酒を呑むためには,健康で時間があること,つまりうるおいのある生活が必要である.
  • お酒をどう工夫すれば,食事を美味しく食べれるか?を考える.
  • お酒は冷やすのではなく,常温で呑む方が美味しい.特に甘味が違う.そこで小林酒造のお酒は「常温」が一番美味しいように造っている(←何も考えずにとにかく冷やせばよいと思っている不勉強な酒屋・飲食店に対する一言らしい).
  • 飲み手が受けきれる中で味わいを追求している.例えば,現在の鳳凰美田は,味,香り共におだやかに造っているので,三年前とはかなり違う.
  • お酒は引きが重要(←女性のウェストに例える(笑)).要するにメリハリがあることが重要で,そのためには酸が必要.
  • 硬いお酒は,瓶を振ってからしばらく(5〜10分)置くと美味しくなる.(実際に三田鶴で実験したが,最初はばらばらだった味にまとまりが出てくる.実は私も時々やっている.)
  • 古い方が美味しいので,将来的には大吟醸は2〜3年低温貯蔵して熟成させてから出荷したい.
  • 純米酒を造らないのは,現在の消費者は純米酒の濃厚な味に耐えれない人が多いから(←私はそうとも思わないが,小林専務は「飲み手が受けきれる限度」というのを重要視しているようである)
  • 生は生らしく,火入れは火入れらしく,おいしく飲める時期を考えて絞っている.(←やたら無濾過生原酒をありがたがる風潮に対しての一言らしい)
  • 山廃(生酛系)は最低五本は造らないと,ちゃんとした味が出ない.(←形だけのいい加減な山廃・生酛を出荷しようとする風潮に対しての一言らしい)
  • 明利酵母(小川酵母,協会10号酵母)はよく鑑評会用に使われるが,一般向けには必ずしも良いわけではない.その理由は,鑑評会は醸造後すぐ飲むが一般の場合はそうでないので味が違ってくることと,味や香りが強いが,その後がダラダラしていてメリハリがないから.(←鑑評会出品酒をやたらありがたがる傾向に対しての一言らしい)
  • 日本酒を使って梅酒も造っているが,昔は3年熟成させていたが,今は1〜2年で出荷している.この理由は,日本酒を使った梅酒は古酒になると,日本酒の熟成香が梅の風味を覆い隠してしまうから.(←泉橋酒造でも似た話を聞いた)

ここ二,三年は鳳凰美田はほとんど飲んでいなかったが,その間に香りや味がおだやかになっており,今の私でも美味しく飲める酒になっていた.特に好印象だったのは,大吟醸15BYの常温・お燗,美田鶴のお燗,発泡酒の冷酒・お燗というところか.とくに地元向けの美田鶴の純米吟醸はコストパフォーマンスが良い酒だと思う.
一応,会は16:00頃に終了して小林専務やお客は三々五々帰っていったが,私は一番最後までいて,用意されたすべてのお酒を飲み干してから帰る(爆)