井のなか(錦糸町)

渋谷駅から半蔵門線錦糸町駅に移動して,「井のなか」に.
料理は,お通しの唐揚げ(野菜だけど不明),酒肴三品盛り合わせ(ごぼうのきんぴら,レバーペースト・マヨネーズ風味,ハムとルッコラのクレープ),茹でホタルイカ,刺身盛り合わせ(鰹,鯵,〆鯖,鰤),極厚トンカツ(バター味のマッシュポテト載せ,大根おろし・ポン酢載せ).最後のトンカツは2〜3cmもあるが,二種類の味で飽きさせないところが良く,完全に満腹.
お酒は以下の通り.工藤氏は最近進藤酒造店に行って来たらしく,山形の酒を呑ませて頂いた.扶桑鶴は生酒なのに,燗してもあまり生っぽさがないところが良い.

  • 出刃包丁 小仕込特別純米酒 中汲み原酒 山形県出羽燦々(55%) 協会7号 20BY 製造年月2009年3月(山形・男山酒造株式会社)燗
  • 羽陽男山(うようおとこやま) 純米吟醸 雫採り 山田錦(50%) 製造年月21年3月(山形・男山酒造株式会社)燗
  • 扶桑鶴 純米吟醸 生原酒 島根県産佐香錦(55%) 協会9号 19BY 製造年月20年9月(島根・株式会社桑原酒場)燗
  • 睡龍 生酛純米 おこぜ 山田錦アキツホ(65%) 16BY 製造年月19年11月(奈良・株式会社久保本家酒造)燗

さて,帰る時に工藤氏に「最近はお客さんは沢山来てくれるんですけど,マニアックな人の割合が減ったんですけど,どうしてですかね?」と相談される.実際ビールだけとか,冷酒しか頼まないお客もよく見かけるようになった.
その時はすでに酔っぱらっていたのでうまく答えられなかったけど,基本的には普通のお客さんでも来やすい店にしようとした工藤氏の方針が反映されたのだと思う.マニアックなお客は常連になりやすく,メニューにないような注文もしがちで,それらの「特別扱い」が普通のお客との間に壁を作りやすい反面,常連は特別扱いをしてもらいたいわけで,この辺は両立がなかなか難しいと思う.たとえば,一人でやっているキャパが小さい店なら常連をしっかり掴んでおけば経営は成り立つけど,従業員を雇用していてキャパが大きい店ではなかなか難しいだろう.
他の理由としては,一時期人手が足りなくて工藤氏が厨房に引きこもっていたことも影響していると思うが,やはり工藤氏はカウンターの中にいないとね.
さて,最後の理由としては,ここ数年で燗酒の裾野がかなり広がったことだと思う.一昔前は「燗酒=安酒」という安直な捉え方をされていて,まっとうな純米酒の燗酒を出してくれる店は常連の年齢層が高く,少々敷居が高かったのだが,最近は30代の若い店主の純米燗が主力の店も増えてきたし,冷酒専門からまっとうな純米燗酒を提供できるようになった店も増えてきた.特に後者は「井のなか」におけるまっとうな純米燗酒の体験をお客が広めていった影響は大きいと思うし,近くでもまっとうな純米燗酒が呑めるようになって来る頻度が減ったということもあるのではないかと思う.