どぶろくと口噛酒(もやしもん)
いや,今回の第三話で,この違いがよくわかった.このアニメには,素晴らしい教育効果があるなあ.この調子で生もとの造り方もやってほしい.
で,見てなかった人に簡単に説明すると,米を使った酒は,口噛酒(くちかみのさけ)と麹を使った酒に大きく分かれる.口噛酒は,穀物やイモ類を口で噛むことで,澱粉を糖化して酒をつくる方法で,日本でも昔作られていたことが日本書紀(酒の神の木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)の天の甜酒(タムサケ) )や大隈国風土記に記録されているだけでなく,半世紀ほど前までアイヌ(紋別)や沖縄(西表島・石垣島など)でも祭事用に作られていたらしい.アニメでは,唾液中のアミラーゼが澱粉をぶどう糖に分解し,さらにS・セレビシエ(出芽酵母)がアルコールにしていた.なお,アニメでは酒に丸みを持たせて味を良くするためにチャバネゴキブリとワモンゴキブリの卵鞘を足していた.
どぶろくは,麹を使って醸す現代の日本酒と基本的に同じ製法の酒で,古くは播磨国風土記にその記載が見られるらしい.アニメでは,次のように作っていた.
- 米を桶に入れて同量の水を加える.
- おにぎりを布袋に入れて一緒に浸す.
- 一日一回混ぜると,空気中の酵母が培養されて(S・セレビシエ?)が培養されて,三日もすると酒の匂いがしてくる.
- この水は取っておき(これがいわゆる「もと」で,後から使う),米を蒸してから人肌に冷ます.
- 米をゴザに広げて,麹(A・オリゼー)をまぶす.
- 米と先ほどの水を混ぜて蓋をしたら,冷暗所に置く.この時点では,酵母と麹だけでなく,さまざまな細菌が混じっている.
- 摂氏6℃の部屋で数日かき混ぜると,寒さでS・ラクチス(乳酸菌,おにぎりにいたらしい)とA・オリゼー,S・セレビシエが生き残るが,主に活動しているのはS・ラクチスで,これが生み出す乳酸が他の菌の繁殖を押さえ,酒に腰を与える効果があるらしい.
- 少しづつ温度を上げると,S・ラクチスよりA・オリゼーとS・セレビシエの活動が活発になり,A・オリゼー(=麹)が澱粉をぶどう糖に分解し,S・セレビシエ(=酵母)がぶどう糖をアルコールと炭酸ガスにする.
- 簡単なものは10日ほど,複雑なものでも一ヶ月でできる.
このように糖化と発酵を並行して行う日本酒独特の醸造方法を並行複発酵と呼び,このおかげでアルコール度が高い酒を作ることができるのである.