京都旅行

突然京都に旅行することにして,当日の早朝にホテルを予約.さすがに三連休は満杯だったので一泊二日になった.目的は,歩き回ることと呑みまくること(爆)学生時代はお金がなかったし,京都出張しても仕事であまり時間がなかったので,今回はゆっくり京都を楽しむ予定.

じん六(京都上加茂)

京都駅に到着して,地下鉄に乗って四条烏丸のホテルに行…かずに通り過ぎ,北山駅に.目指すは「 蕎麦きり さいとう」のブログで褒められていたこの店.学生時代はちょうど北山通が開発されておしゃれな店が増え始めていたころだったが,交通は不便で基本的に車でデートしに行く場所(=車を持っていなかった私には縁がない)だったが,今では地下鉄一本で行けるのだから,便利になったものである.しかし,前回ここにY田氏と来た時に蕎麦屋なんかあったかなあ?と思いながら歩いていたら発見!その時わからなかったのも当たり前で,北山通に面したところには門だけしかなく,それから10mぐらい奥まったところの他の店舗の後ろにひっそりと建っていたのである.13:00頃でまだ客が一杯で外で待ったが,こじんまりとした中庭がなかなか風情があってよい.

店の中に入ると,これまた風情のあるつくりで,木の四人がけと六人がけのテーブルに小上がりがあり,天井が非常に高い.また,広いガラス戸から中庭が見渡せるのだが,ちょうど植物園が借景となって非常によい雰囲気を醸し出している.
まず,そばがき,にしん煮,酒を頼む.お通しは人参の漬物.そばがきには蕎麦つゆと山葵がついてくるが,最初は何もつけないでと言われたのでそうしてみたが,熱々でふっくらしていて,そのうち口中を蕎麦の味がじわじわと広がってきて,これは良い.にしん煮も,松葉のにしん蕎麦に乗っているものはそれほど美味しいとは思っていなかったが,これはふっくらとやわらかくて美味い.
その後,そば三昧(三種類の蕎麦の盛合わせ)と酒を頼むと,最初にえごま味噌が出て,その後,北海道(新蕎麦),茨城,福井(田舎蕎麦)の順番に出てきた.なお,薬味は山葵と辛味大根を選べるが,京都ということで辛味大根を選択してみた.どの蕎麦も蕎麦の味わいがストレートに出ているタイプで,少しづつ違う味わいがして面白い.
さて,酒は冷やだったが,あまり香りが高いタイプでなかったことと,片口に入れて出してくれるので温度の上昇や味が開くのが早く,マッチングは良かったと思う.
最後にタイミングを見計らって,蕎麦湯が出てくるが,蕎麦粉を溶いているために蕎麦の風味がしっかりしているタイプで,蕎麦つゆが小さな徳利にたっぷり出てくるので,これだけでも美味しく長く楽しめた.
蕎麦湯を楽しんでいたら,ご主人が出てきて,いろいろ話を聞かせてもらった.たとえば,今は北海道から新蕎麦が出荷されたが,これからはどんどん南下してくること,長野は村おこしのための地元消費が増えているからか価格が高くなり,質が良いものも入手できなくなってきたので使用を断念したこと,福井の蕎麦は最初に使ったために思い入れがあること,東京なら眠庵が良いなど.なお,酒も今常温保存にチャレンジしているらしいが,なかなか難しいとのこと.それならぜひお燗を!と言ったら,今は自分の他にはお燗をまかせられる人がいないんだよね…とのこと.それなら燗酒を頼んだ本人が湯煎できるようにと湯煎徳利を推薦しておいたが,さてどうなるか?この店は結構お薦めだと思う.

ひろ吉&谷口松韻堂(京都清水)

その後ホテルに荷物を置いてから,錦市場四条河原町界隈を散策し,その後清水寺方面に向かう.狙いは清水焼.最初はひろ吉で貫入が入った平杯(自分用)と桜の花びらが散った桜色のぐい呑み(これは姉の子供のS子の15年後用(笑)).次は谷口松韻堂で白萩釉のぐい呑みとこれまた桜の花びらが散ったクリーム色で細かい貫入が入ったぐい呑みを購入.なお,片口の使い方に注意しろと書いてあるので聞いてみると,作陶していたご主人が手を休めて語り始め,それによると「ずぼらに扱え.決して洗剤で洗うな!」ということらしい.特に荒い土を使っている片口の場合には,一度洗剤が染み込んでしまうと決して取れなくなり,酒の味わいを損なうとのこと.また,日本酒を飲む時には,一度片口に注いでから徳利に移すとおいしくなる(ワインのデキャンタージュと同じ,もちろん錫のチロリでもよい)とのこと.
さすがにこれ以上見て回ると買いすぎ危険だと思い,賀茂川沿いを散歩してホテルに戻る.

赤垣屋(京都川端二条)

最初に腹ごしらえをするために,ネットで評判が良かったこの居酒屋に.
メニューは経木に手書きで書かれており,なかなか風情がある(ただし,達筆で慣れるまで読むのに苦労した).料理は,焼き鳥(皮,砂づり),おでん(卵,じゃがいも,厚揚げ,大根),万願寺青唐,鯛の荒煮.素材は良く,味は非常にまっとうな正統派の味付けだと思う.酒は最初に生ビール大を頼んでから,熱燗2本.熱燗は伏見の名誉冠普通酒本醸造?)を細目のタンポ(ステンレス製?)に入れておでんの鍋と一体化した燗どうこでお燗してくれる.酒質は価格なりなのだが,燗のつけ具合がなかなか絶妙で,ちょっと熱めなのだが,キレが非常に良くなり少しびっくり.
なによりここが良いのは,その雰囲気である.裸電球の照明の時代がかった内装はもちろん,店員が礼儀正しく,おでんの種類を一つ一つ丁寧に教えてくれたり,常に注文は復唱し,時間が掛かるものは状況を何度も報告してくれるとか,常に明るく笑顔で私のような新参者にも常連との会話に入れるように配慮してくるとか,ここまで気分の良い居酒屋ははじめてかもしれない.価格も比較的安かったように思う.

日本酒BARあさくら(京都木屋町)

次は,木屋町御池を下って一筋目を東に入ったところにあるこの店に.実はこの店のブログはいつも読んでいるのだ.料理は軽食中心だが,鯖寿司とか思ったよりも置いてあり,さまざまな種類のチーズが揃えてあるが,軽くトマトを頼む.お酒はしっかり系も結構あって,燗を頼むと錫の徳利を湯煎して,錫のお猪口と一緒に出してくれる.なお,神戸の燗酒劇場に来ていたらしいので,るみちゃん(=着物姿の美女)を見かけたか聞いてみたが,400人も参加者がいてわからなかったとか.遊穂は17BYでももっと熟成が必要だねと言ったら,冷蔵保存しているのでなかなか熟成しないとのこと.

  • 刈穂 山廃自然米酒 陸羽132号(60%) 製造年月2006年12月(秋田・刈穂酒造株式会社)燗
  • 遊穂 純米酒 山おろし純米 麹米:五百万石(60%)・掛米:能登ひかり(55%) 17BY(石川・御祖酒造株式会社)燗

酒BARよらむ(京都東洞院二条)

次は,少し離れた二条通のこの店に.ガラスの扉を開けると,玉砂利の上に飛び石が配置されていて,そこを通って奥がカウンターという非常に京都らしい贅沢な作り.店主のオフェル・ヨラム氏(イスラエル人だけど,日本語は堪能)に聞くと,あまり広い店にしたくなかったからだそうで,京都は飛び石とかが簡単に入手できるからとのことだが,この思い切りが凄いと思う.
お通しはゴマ豆腐.どんな酒がいいか?と聞かれたが,東京であまり飲めない酒がいいということで,これらの酒を選んでもらった.基本的には,この店は熟成した酒が強い感じである.燗を頼むと,徳利を鍋で湯煎してくれた.蒼空は伏見の酒のわりには,ちゃんとした食中酒っぽい造り.熟成させた秋鹿はもちろんうまい.梅の宿は,長期熟成でも低温保存すると過度に熟成しないということでえらんでもらったが,確かにその通りであった.
この日は先客にアメリカ人がいて,旨い,旨いと言いながらばんばん日本酒を呑んでいた.ヨラム氏には,英語で喋ってごめんなさいと言われたが,その後私も雑談に参加したりして,アメリカ人が帰ってからはディープな日本酒談義.なお,彼は竹鶴が嫌いで,「こんなにしっかりしたお酒を,熟成不充分の状態で出すのは信じられない」という理由だったが,彼が見せてくれたのが小笹屋竹鶴の宿根雄町だったので,「これは特に熟成が遅い米なんだよ」と言っておいた.番外編を推薦しておくとよかったかな.
この店は,揃えたお酒の傾向と店主のこだわりの強さから,万人向きの店とはとても言えないが,熟成酒好きなら一度行ってみるとよいと思う.なお,昼は友人が「手打とおる蕎麦」という蕎麦屋をやっているそうである.

  • 蒼空 純米酒熟成生 山田錦おりがらみ 2003仕込み7号 製造年月2007年5月(京都・藤岡酒造株式会社)燗
  • 秋鹿 山廃無濾過純米吟醸原酒 山田錦(60%) 2004仕込み 製造年月17年11月(大阪・秋鹿酒造有限会社)燗
  • 梅の宿 昭和63年 純米吟醸 長期熟成酒 製造年月15年11月(奈良・梅乃宿酒造株式会社)常温