じん六(京都上加茂)

京都駅に到着して,地下鉄に乗って四条烏丸のホテルに行…かずに通り過ぎ,北山駅に.目指すは「 蕎麦きり さいとう」のブログで褒められていたこの店.学生時代はちょうど北山通が開発されておしゃれな店が増え始めていたころだったが,交通は不便で基本的に車でデートしに行く場所(=車を持っていなかった私には縁がない)だったが,今では地下鉄一本で行けるのだから,便利になったものである.しかし,前回ここにY田氏と来た時に蕎麦屋なんかあったかなあ?と思いながら歩いていたら発見!その時わからなかったのも当たり前で,北山通に面したところには門だけしかなく,それから10mぐらい奥まったところの他の店舗の後ろにひっそりと建っていたのである.13:00頃でまだ客が一杯で外で待ったが,こじんまりとした中庭がなかなか風情があってよい.

店の中に入ると,これまた風情のあるつくりで,木の四人がけと六人がけのテーブルに小上がりがあり,天井が非常に高い.また,広いガラス戸から中庭が見渡せるのだが,ちょうど植物園が借景となって非常によい雰囲気を醸し出している.
まず,そばがき,にしん煮,酒を頼む.お通しは人参の漬物.そばがきには蕎麦つゆと山葵がついてくるが,最初は何もつけないでと言われたのでそうしてみたが,熱々でふっくらしていて,そのうち口中を蕎麦の味がじわじわと広がってきて,これは良い.にしん煮も,松葉のにしん蕎麦に乗っているものはそれほど美味しいとは思っていなかったが,これはふっくらとやわらかくて美味い.
その後,そば三昧(三種類の蕎麦の盛合わせ)と酒を頼むと,最初にえごま味噌が出て,その後,北海道(新蕎麦),茨城,福井(田舎蕎麦)の順番に出てきた.なお,薬味は山葵と辛味大根を選べるが,京都ということで辛味大根を選択してみた.どの蕎麦も蕎麦の味わいがストレートに出ているタイプで,少しづつ違う味わいがして面白い.
さて,酒は冷やだったが,あまり香りが高いタイプでなかったことと,片口に入れて出してくれるので温度の上昇や味が開くのが早く,マッチングは良かったと思う.
最後にタイミングを見計らって,蕎麦湯が出てくるが,蕎麦粉を溶いているために蕎麦の風味がしっかりしているタイプで,蕎麦つゆが小さな徳利にたっぷり出てくるので,これだけでも美味しく長く楽しめた.
蕎麦湯を楽しんでいたら,ご主人が出てきて,いろいろ話を聞かせてもらった.たとえば,今は北海道から新蕎麦が出荷されたが,これからはどんどん南下してくること,長野は村おこしのための地元消費が増えているからか価格が高くなり,質が良いものも入手できなくなってきたので使用を断念したこと,福井の蕎麦は最初に使ったために思い入れがあること,東京なら眠庵が良いなど.なお,酒も今常温保存にチャレンジしているらしいが,なかなか難しいとのこと.それならぜひお燗を!と言ったら,今は自分の他にはお燗をまかせられる人がいないんだよね…とのこと.それなら燗酒を頼んだ本人が湯煎できるようにと湯煎徳利を推薦しておいたが,さてどうなるか?この店は結構お薦めだと思う.