べっしゃん 酒べ会 杜氏さんと酒べ! 京都木下酒造「玉川」Philip Harper杜氏をお迎えして(東伏見・居酒家べっしゃん)

今日は玉川のお酒の会.この店で別府氏が京都旅行から持ち帰った「玉川」に初めて出会って以来ずっと注目していたが,大塚屋が扱うようになり,呑む機会が格段に増えている.今回はぜひ参加したい!と前々からずっと言っていたこともあり,予告した来店時間の直前に満席になってしまったが,無理矢理一人分の席を増やしてもらった.別府氏,どうもすみません.

料理は,おまかせパレット(鰈の昆布〆,蛸ぶつ,鯵,のれそれ,クリームチーズ+トラウトサーモン,鰹,稚鮎の甘辛煮,ホタルイカ,レバ刺),薫製蒲鉾,おにぎり.別府氏によると稚鮎は失敗作らしいが,味は非常に美味しい.



お酒は以下の通り.Time Machineには,以下のようにアイスクリームを会わせて,一緒に口に含んだり,アイスクリームに掛けて食した.玉川の魅力は,それぞれのお酒が美味しいだけでなく,お酒ごとにかなり違った造りを試みているために,玉川だけでフルコースに対応できるような総合力を兼ね備えていることだと思う.

  • 玉川 Ice Breaker 無濾過生原酒 日本晴(60%) 協会9号酵母 製造年月2010年5月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 純米吟醸 祝 無濾過生原酒 仕込10号 京都産祝(60%) 協会7号酵母 21BY 製造年月2009年12月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 純米吟醸 雄町 岡山県産雄町(60%) 協会14号酵母 製造年月2010年4月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 自然仕込 純米酒(山廃) 白ラベル 仕込32号 北錦(66%) 蔵付酵母 21BY 製造年月2010年3月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 自然仕込 生酛純米酒 コウノトリラベル 五百万石(77%) 蔵付酵母 製造年月2009年6月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 自然仕込 純米大吟醸 玉龍(山廃) 無濾過生原酒 仕込19号 兵庫県山田錦(50%) 蔵付酵母 20BY 製造年月2009年10月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 Time Machine 1712 無濾過生原酒 北錦(88%) 製造年月2010年4月(京都・木下酒造有限会社)
  • 玉川 本醸造 久美浜(68%) 製造年月2010年5月(京都・木下酒造有限会社)…「秘密のお酒 其の一」としてブラインドで提供
  • 玉川 純米原酒(雄町) 五百万石・日本晴(66%) 19BY 製造年月2010年5月(京都・木下酒造有限会社)…「秘密のお酒 其の二」としてブラインドで提供

ハーパー杜氏にいろいろ教えて頂いたことを以下にメモしておく.

  • 昔は蔵人は酒造りが終わったら原酒を貰って帰る風習があった.しかし夏になると暑い上に酒が濃いので,氷を入れて割って飲んだらしく,アイスブレーカーは,そのような飲み方をするように作られた原酒である.特にワイングラスに氷を入れて呑むと,風鈴のような音がして良い.
  • アイスブレーカーをお燗して「ホットペンギン」(ペンギンマークだから)として提供している飲食店があるらしい(笑)
  • 玉川の白ラベルはアルコール分21.5%.これは完全醗酵を目指したらこのアルコール度になったそうで,21%から21.5%になるまでに一週間掛かったとか.かなり硬いお酒で,味が開くまでにまだまだ掛かりそうだ.なお,22%以上だと酒造法の区分が「純米酒」から「その他の酒」に変わるそうで,来年は22%を超えることを目標に今新たな酒造免許を申請しているところらしい.
  • 生酛純米は明治時代の日本酒の造り方を参考にしているらしい.
  • コウノトリは田んぼの生物がいなくなると生きて行けないために,兵庫県立コウノトリの郷公園付近では極力農薬や化学肥料をなくした農法で育てており,生酛純米ではここで育てた五百万石を使っている.この酒米の価格は特A地区の山田錦よりも高いので,精米歩合を77%にしているらしい.
  • 玉龍は蔵付き酵母の大吟であり,吟醸香はなく,お燗も旨いご飯に合う酒である.
  • Time Machineの「1712」は,造り方が書かれていた江戸時代の文献の発行年らしい.昨年度の日本酒度・酸度・アミノ酸度は-73・2.9・5.6,今年は-90・3.3・9.4だったそうだ.他の酒と比べたが,やはりこれはアイスと抜群に合うし,へしこにも合うらしい.ケーキを作ると面白いと思ったのだが,そうなるとコストが高くなりすぎるらしい.
  • Time Machineの黄色い色はアミノ酸の色.しかし,大塚屋・京子さん曰く「ウコンの力を混ぜてます」(爆)
  • 久美浜は3年熟成・無濾過の美味しいキレがある本醸造で,ほとんどの人がこれを本醸造と気が付かないらしい.ハーパー杜氏曰く「しっかりした杜氏が造った美味しい本醸造ももっと味わって欲しい」そうである.
  • 前から,アル添のお酒は新酒だとアルコールのなじみが悪いが,熟成させることで,それが目立たなくなる気がしていた.何年か寝かせている貰い物の本醸造があるので,三年ぐらい立ったらそれも開栓してみようと思う.
  • 木下酒造の蔵付き酵母を分析したら,7号酵母が主らしい(竹鶴酒造も同様).
  • 木下酒造に移っての最初の造りから蔵付き酵母を使うとは,失敗は怖くなかったのか?と質問したら,一年目で成功したら,同じ造りが期待されるのでチャレンジする機会を無くしてしまうので,逆に一年目からやらなければいけないと考えたそうである.
  • 京都の酒造好適米「祝」は決して作りやすいお米ではないのだが,農家にとって減反対象ではないという利点があるらしい.
  • 北錦は心白が大きくて吟醸造りには向かないのであまり使われなくなったが,玉川が使うようになって農家は喜んでいるらしい.
  • 玉川の造石数は,19BY 300, 20BY 450, 21BY 550と増えている.22BYは750を目指しているらしい.
  • ハーパー杜氏は,最初に学んだのは但馬杜氏だが,現在は南部杜氏組合に属している.しかし,味の傾向としては南部杜氏よりも但馬杜氏に近いらしい.
  • ハーパー杜氏が英語教師として20年前に来日してから一緒に日本酒を呑み歩いた二人の日本人(悪友?(笑))も,現在は二人とも杜氏をしている.その一人が,あの遊穂の横道杜氏.ハーパー杜氏によると,横道杜氏は「友達ではなくライバル」だそうである.
  • ハーパー杜氏がこれから造りたいのは熟成酒と菩提酛.熟成酒用に蔵で保存しているお酒もすでにあるとか.ただ一気に種類を増やしすぎて,会社からはしばらくは種類を増やさないでくれとお願いされているらしい.

この日の私のお気に入りは,生酛純米,山廃純米赤ラベル純米吟醸雄町,玉龍だったが,ちゃんと熟成された山廃純米白ラベルにも非常に期待しているし,アイスブレーカーやタイムマシーンのような飲食に幅を持たせるお酒も素晴らしいと思う.
なお,幸運なことに純米吟醸・雄町の四合瓶が当たった!これはしばらく熟成させてから呑もうと思う.
このような素晴らしいイベントを企画して頂いたべっしゃん・別府氏と大塚屋・京子さん,そしてわざわざ京都(と言っても日本海側なのでものすごく時間が掛かるのだ)から来て頂いたフィリップ・ハーパー杜氏に感謝する.